なお屋

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ほんっと、地獄も同然の日々を強いられているのですョ!

 エルフの村を出てからというもの、わたしは、来る日も来る日も魔力を吸われる日々を送ります。

 なんか、魔物が襲撃してくる度に変身魔法を強いられるのです。それはもう強制的に!

 こんなん、たまったもんじゃないですよ!?

 それはまさに奴隷の身にやつした薄幸の美女! 地獄といっても過言ではない毎日!!

 魔力が枯渇したところで別に痛くも痒くもないですけど、とにかくダルいのです。

 さらに、ゴトゴトと揺れる馬車なものですから、すっかり馬車酔いしてしまい気持ち悪いのなんの……

 そんなわけで、わたしは少しでも体力気力魔力を回復しなければならない超重要な立場上、馬車の中で横たわる日々なのでした。

 なんか夜になると、このキャラバンで知り合ったクラハちゃんとアオイさんが小難しい話をしていたり、わたしのスマホ使いたい放題で何かを書いたりしていますが、そこはすべてスルーなのです。

 何しろ、魔力を吸われすぎて大変なのですからねわたしは!

「うぅ〜。ダルい。気持ち悪い」

 その晩も、わたしは酷使された肉体と精神に悲鳴を上げると、アオイさんは、なぜか呆れたまなざしを向けてきます。いまは、クラハちゃんがこの馬車に来ているので美少女の姿です。

「お前は……馬車の中で寝てるだけだろーが」

「だれのせいで……わたしがこんなに……疲れ切ってると思ってるんですかぁ」

「お前が、年齢性別その他諸々を間違ったせいだろ」

 責任転嫁も甚だしい!

 ですがわたしは、もはや言い返す気力もなく、涙目を作ってティファさんにすがりよります。

「うう……ティファさん……アオイさんがひどいんです……」

「うんうん、よしよし。ユーリちゃんはがんばってるよね」

「なぁティファ姉。ユーリをあんまり甘やかすなよ」

「まぁまぁアオイちゃん。ユーリちゃんががんばっているのは事実なんだし。今もね」

 さすがティファさん。よく分かってらっしゃるのです。

 アオイさんが美少女としてクラハさんとお話できているのも、みんな、わたしが変身魔法を使っているからなわけで、そのありがたみを、アオイさんはもっと噛みしめるべきなんですよ、まったく。

 もういいです。いくら見た目麗しくてもアオイさんなんて嫌いです。

 それにティファさんも息を呑むほどの美貌ですし。じゅるり。

「ティファさぁん。今日もアレ、お願いしますぅ」

「ええ、いいですよ」

 わたしがティファさんの前にうつ伏せになると、ティファさんがマッサージを始めてくれます。

 肩から首筋、肩甲骨から徐々に全身へと、今日も優しくもしっかりと筋肉を剥がしてくれます。くぅ〜〜〜キク!

 ティファさんの細い指先のいったいどこにそんな力があるのか。あるいは魔法でも使っているのか。とにかく絶妙な力加減!

 そうしてイタ気持ちよさが全身に広がっていきます。疲れた体には染み渡りますねぇ。

「うはぁぁぁ……いいですよ、いい……あっ……そこそこ!」

「おいユーリ。ミーティング中なんだから変な声だすな」

「お外でミーティングすればいいじゃないですかぁ」

 そちらを見ると、アオイさんはご立腹のようすですが、クラハちゃんはなんかちょっと頬を赤らめていますね、何でだろ?

「あハッ! そこそこ!」

「お前なぁ……ティファだって魔力供給で、お前以上に疲れてるんだぞ?」

「まぁまぁアオイちゃん。わたしならまだ大丈夫ですから」

 確かに、ティファさんからの魔力はすんごいですけど、変身魔法を使っているのはわたしなんですからね。

 このわたしが使い物にならなくちゃ始まらないんですから。

「ああ! いい、ソコ、ソコです! もちょっと強く……うひ〜!」

 ティファさん、もうサイコー!

 これで人妻なのが本当に惜しいですが、そうでなかったら、器量よし性格良し面倒見良しですから、もう結婚して欲しいですョ!

 あ、そだ。

「わたしぃ、もうティファさんちの娘になるぅ〜」

「あらあら。わたしとしては大歓迎ですよ?」

「お前なぁ……」

 うふふ〜。じゃあもうティファさんちの子になろう。

 そういって、わたしはティファさんの太ももに顔を埋めます。

 ああ……いい匂い……

「じゃあ……今日からわたし……ティファさんの子……」

 なんか、頭のてっぺんからたますぃがすぃ〜っと抜けていくような。そんな心地よさを覚えてわたしの気が遠くなります。

「だぁぁぁぁ! おいユーリ! 寝るなバカ!」

「ぐふっ!」

 せっかくの心地よさだったというのに、アオイさんに無理やり起こされてわたしは呻き声を上げました。

「もぉ……なんなんですぁ……人がせっかく気持ちよく……寝ようと……」

「ああもう!? いってるそばから! クラハすまない! 今日はこの辺で、続きはまた明日ってことでいいかな? い、いやちょっとね、ユーリが寝るとまずいっていうか──」

 アオイさんの、そんな言い訳じみた台詞を子守歌代わりにしながら、その日のわたしは眠りにつくのでした。

 まったく……睡眠も好きに取らせてくれないなんて……ほんとにどうにも……地獄のような環境ですョ──

 

(つづいた)

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