なお屋

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自分の、あまりの策士ぶりに怖くなりますョ……

「分かった……貴様の要求は分かったから……とりあえず、わたしの来賓扱いでどうだ……?」

 応接間の窓からは朝日が差し込み、小鳥のさえずりがチュンチュンと聞こえてきます。

 それは地獄の底に一筋の光が差し込むかのような、まさにそういう類いの感動的なワンシーンでした。

 ですがわたしは、あえて問い返します。

「来賓といっても、いつまで来賓でいられると?」

「ずっと……ずっとでいいから! もう勘弁してくれ!」

 神出鬼没のわたしが夜通し行ったプレゼンで、セドリックさんはついに認めてくれたようです……!

「はい、喜んでずっと来賓になりましょう!」

「分かったならわたしはもう寝る!」

「あ、でも契約書とかに書いておかないと、いつ裏切られるか──」

「分かった! 分かったから! いますぐ秘書を呼んで手続きするから!」

 とにもかくにもわたしは、自分の熱意を伝えるために、冥界と下界を何度も行ったり来たりしながら一晩かけてセドリックさんをきょうはk──いえ説得したのでした。

 その甲斐あって、わたしはセドリック家の来賓として、もてなされることになったのです!

 セドリックさんと入れ替わりで応接間に入ってきた秘書さんに、わたしは尋ねます。

「この契約書、『甲乙双方の申し出がない場合、1年毎の自動更新とする』ってあるじゃないですか。コレ、『甲の申し出があっても、乙の申し出がない場合、100年毎の自動更新とする』になりませんかね?」

 もちろんこれは、正式な契約ですからお仕事なのです。

 では何のお仕事なのかといえば、まぁ平たくいえば用心棒のようなものでしょう。

 戦闘能力のないわたしがなぜ用心棒ができるのかというと……ふふふのふ〜♪

 実ワ、なのですョ。

 頭がすこぶるよろしいわたしは、この一連の誘拐騒動で気づいてしまったのですョ。

 そう──わたしが、この天才ユーリちゃんこそが、アオイさんパーティーの肝心要な存在であることに!!

 なぜってアナタ、そりゃわたしがいなくちゃアオイさんは変身できませんから、いくらアオイさんの知能が高くても、戦闘能力ゼロの単なる赤ちゃん。

 物騒極まりないこの異世界では、理屈をこねたところで結局は戦力なのです。

 その戦力を発揮するためには、わたしが、このユーリちゃんこそが必要だったのですョ!

 しかも、しかもです。

 この天才ユーリちゃん、どこへなりとも逃げ放題、なのです。

 つまりわたしってば、自分は極めて安全でありながら、アオイさんの弱みも握っているというコト。まさに……まさに食物連鎖的ヒエラルキーの頂点に君臨しているわけなのですョ!!

 くっくっく……

 見てなさいよ、アオイさん?

 今までさんざん、吸われたり叩かれたり、吸われたり炙られたり、吸われたりたかられたり、吸われたり沈められたりの恨み……いまこそ、いまっこそココで晴らさでおくべきか!?(いや、晴らさなければならない!!)

「くくく……くっくっく……」

「お前……頭大丈夫か……?」

 あてがわれた豪華な貴賓室を前にして喜びを噛みしめていると、生活必需品を運んでくれてた黒づくめAさんが呆れた声音で聞いてきます。

 っていうかこの人、もう屋敷の中だというのになんでまだ全身黒づくめなんですかね……?

 まぁそんな些事には構わず、わたしはAさんに答えます。

「わたしの、あまりの策士ぶりに思わず声が漏れてしまっただけですョ……」

「セドリック様がウンザリするまで付け回してただけだと思うが」

「そのことではないのです! 天才はいつだって理解されないのです!!」

 もういいです。こんな凡人は放っておきましょう。

 これでわたしは、一生安泰な生活をゲットして、かつ、アオイさんに復讐もできるのですからね!

「よぉし! 黒づくめさん! 前祝いにパァっと飲みに行きますよ!」

「いや、オレには公務が……」

「わたしが、好き勝手に街に出掛けてもいいんですか〜? まぁテレポート(もどき)があれば、好き勝手に出歩けますけどね〜?」

「くっ! わ、分かった、分かったよ!」

 こうしてわたしは、徹夜の疲れも吹っ飛ばす勢いで酒場へと繰り出したのでした!

 

(そろそろ終わるかと思ったらぜんぜん終わらなくてまだつづく)

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