なお屋

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こんなシリアスでシビアな展開、誰も求めていないから!?

 つい昨日までは、可愛いメイドさんたちとイチャイチャの日々だったのに。

 なぜか今日は、留置所の寒々しい牢屋に押し込められているわたし。

 いったい、なんで?

 わたしはただ単に、普通よりちょっといい暮らしを求めていただけの、そんなささやかな願いを抱いていただけの、いたいけな女の子なのに。

 しかも、しかもですよ?

 エレシュ係長に捕まって、下界担当官としての資格と魔法とその他諸々を強制剥奪されて、その腹いせに、著作権違反verのほうの変身呪文を教えてあげましたがそれはともかく、いったいどうしてわたしが捕まらなくちゃならないのかを聞いてみれば……

「あなた、本当に自覚がないんですか?」

 下界に降りるだけだというのに、なぜか、女神風コスプレでキメてらっしゃるエレシュ係長はいってきました。

「分からないのなら……もう、いいです……とにかくあなたは、良くて終身刑、悪くて地獄刑だと思いますよ……さすがにもう、わたしもかばいきれませんから……」

 そんな感じに、たいそう残念な面持ちでおっしゃるのです。

 ……はて?

 地獄刑というのは、アオイさんの世界でいうところの死刑に相当するというか、死刑のほうがまだぜんぜん生ぬるいというかの刑なのですが。

 普通よりちょっといい暮らしを求めていただけのわたしに、いったいなんでそんな重刑が科せられるというのでしょう?

 はっはっはっ。

 そんな、あり得るわけないじゃないですかー。

 エレシュ係長は、きっと、ヤヴァイ呪文を教え込まれた仕返しに、ちょっぴりお茶目な冗談をいっているだけですよね?

 ……まぁ、エレシュ係長の冗談なんて聞いたことありませんが、だからこそセンスないですよ?

 もうほんと、笑えませんから。地獄刑だなんで。

 あり得るわけないじゃないですか〜……

 ほんとにまったく〜……

 いやほんとに……

「ほんとなんで!?」

 わたしは発作的に牢屋の鉄格子をガンガン叩いて「出して!? 出してよ!!」と叫びますがされも取り合ってくれません!

「どうしてわたしがこんな目に!? おかしいでしょ! そりゃあ多少道理に反する行いはあったかもですが地獄刑だなんてあり得ないでしょ!?」

 いったいどのくらい叫んでいたでしょうか?

 もはや声も枯れて、わたしはただただ泣きじゃくるしかなくなったころ……

 一人の警官がやってきて、いいました。

「8791番。出なさい」

 わたしは手錠をはめられて、スゴスゴと牢屋から引きずり出され、そうして連れて行かれたところは面会室でした。

 ですが面会室には誰もいません。

 その代わり、透明アクリル板越しにスマホが一台設置されてました。

 ……ナニこれ?

 わたしが呆然としていると、そのスマホのスピーカーから、先ほど話していたばかりなのに妙に懐かしい声が聞こえてきました。

 『あー、もしもし?』

「アオイさん!? アオイさんですか!?」

 少しでもその声を聞き取るべくアクリル板に張り付いて、通声穴に向かって声を張り上げました。

 『よぉ……いまドコ?』

「牢屋です! 牢屋の中ですよ!? 助けてください助けてください! 地獄はイヤーーーー!」

 『なんというか……まぁ……ご愁傷さま?』

「そんな冷たい!? 助けてくださいよ!? わたしとアオイさんの仲じゃ──」

 わたしが必死に懇願しているというのに、横で控えていた警官が割って入ってきました。

「おい、8791番。もう通話が切れているぞ」

「そ……そんな!? まさかアオイさん、わたしを見捨てる気ですか!?」

「さぁ、戻るぞ」

「イヤーーー! 地獄はイヤーーー!!」

 わたしのその悲痛な叫びに、まるで反応するかのように。

 アクリル板越しのスマホは着信音を上げました。

「鳴ってる! スマホ、鳴ってるから!」

 警官はため息をつきながらも通話してくれました。

 まるで、天使の声のようなアオイさんの声が聞こえてきます……!

 『おい、ユーリ』

「はい!」

 『お前、もう本当に裏切らないと誓うか?』

「もちろんですアオイさん!」

 『オレのいうことちゃんと聞いて、魔法の修行も一生懸命励んで、出し惜しみせず変身魔法を使うと誓うか?』

「当たり前じゃないですかアオイさん!!」

 『………………ハァ。まったく、調子がいいんだから』

「助けてくれますよねアオイさん!?」

 『なるべく善処するよ』

「それってやらないヒトの台詞ですが!?」

 『分かった、分かったから。ただ複雑な手続きが必要みたいだから、数日そこで反省してろよ?』

「数日したら助かるんですね!?」

 『……少なくとも、地獄刑とかいうのは回避してやるから』

「期待してますよアオイさん!? わたし、もうあなただけが頼りなんです! 何でもいうこと聞きますから! 一生付いていきますから! なんなら結婚しますから!!」

 わたしのプロポーズに『それはいい』なんてつれない一言を残し、アオイさんは通話を切ったのでした。

 ひどひ……

 

(おまけにつづく)

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