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転生したらチートだけど美少女に性転換ですョ(ToT) Vol.3

カバー

学園都市での大騒ぎが一段落してみれば、その悪目立ちがたたって教会勢力に目を付けられ呼び出しを受けるアオイたち。

そこで、変身魔法や世界崩壊の謎がみるみるうちに解き明かされていく……のか!?

そんな謎が謎を呼ぶ第三巻! ぜひご一読ください!

試し読み

第一話 両手に花、後頭部に乳

 マージエ魔法学園の学食で、ティファに抱っこされた赤ん坊のオレは、ほとほと困って身を強張らせていた。

「はい、アオイ様。あ〜〜〜ん」

 オレの右側では、見事な縦ロールが煌びやかなフローランス・エステル・タイユフェルが、一掬ひとすくいの離乳食をオレの口元に寄せてくる。

「ちょっとフローランス。次はわたしの番だよッ」

 オレの左側では、普段は大人しいのにいざというときは物怖じしないマナ・コーカンドが、哺乳瓶を片手に文句を言った。

「あら、マナさん。いましたの?」

「さっきからいたし、一緒にご飯をあげてたでしょッ」

「おや失礼。わたくし、アオイ様の姿しか目に入らないもので」

「ならその両目、何かの病気じゃないの?」

 そうして、どんどん険悪になっていく二人の雰囲気……

 今はちょうど昼休み。食事のため、元の姿である赤ん坊にオレは戻っているのだが……そこに学園で知り合った二人が押しかけてきて、この顛末と相成った。

 オレは、赤ん坊の体では会話できないので、ため息をつきながら念話を使う。

(な、なぁ……フローランスにマナ。そもそも赤ん坊のオレは、そんなにたくさん食べられないから、もう十分だよ……)

 そうするとマナがすかさず言ってくる。

「そっか! じゃあ次はお昼寝だね! わたしが保健室のベッドまで連れて行ってあげるよ!」

 その台詞に、すぐさまフローランスが文句を付ける。

「ちょっとマナさん! 保健室のベッドなんて粗野な代物にアオイ様を寝かしつけないでくださる!? アオイ様はわたくしが用意したホテルのベッドで──」

(だあぁぁぁ! 二人ともやめろやめろ!)

 辛抱堪らず、オレは念話で二人を一喝する。

(オレは保健室のベッドでいいし、そこにはティファに連れて行ってもらうから! つまりオレの世話は母──もとい姉のティファがやってくれるから! 二人とも昼休みが終わったら授業に出ててくれよ……!)

 転生したオレの異世界での母であるティファは、最近とくに母親扱いされるのを嫌がるので、この魔法学園では姉ということで通している。

 そのティファがニコニコしながら言った。

「あらあら。やっぱりアオイちゃんは実の姉がいいのかしら?」

 それを聞いて、フローランスが恨めしげに言ってくる。

「うー……それは確かに、肉親であるお義姉様ねえさまがお世話するのはいいとして……」

 ……なんか、フローランスの『おねえさま』に含まれてるニュアンスは、ちょっとおかしくないか?

 オレが眉をひそめているのには誰も気づかず、マナは少し頬を膨らませて言った。

「でもいくら肉親だからって、こんな可愛いアオイを独り占めなんてずるいよぅ……アオイのお世話は当番制にしない? そのほうがティファもラクでしょう?」

 ティファが小首をかしげながら言葉を濁す。

「でも、マナちゃんもフローランスちゃんも授業があるでしょう? そうなるとアオイちゃんのお世話は難しいんじゃ……」

 しかしマナは不満げな声を上げた。

「えー? でもティファだって授業があるじゃない」

「わたしは、アオイちゃんのお世話が目的で入学しただけだから。単位は別に取らなくてもいいし」

 そうすると今度はフローランスが言ってくる。

「でもお義姉様。たまには子育てを休むことも必要でしょう? 放課後でしたら、わたくしにお世話をさせて頂いても……」

「ねぇ、ちょっとフローランス? さっきから、ティファの呼び方のニュアンスがおかしくない?」

「何を言っているのやらですわ、マナさん。わたくしとアオイ様は将来を誓い合った仲ですから──」

「だから! それは誤解だってアオイが言ってたでしょう!?

「ふふふ……アオイ様は照れてらっしゃるんです」

「照れも何も、結婚はできないってはっきり否定したじゃない!」

「それはもちろん、まだ学生の身空では結婚するのは難しいでしょうし」

「だ・か・ら! 学生だとかの話はぜんぜん出てきてないでしょう!?

「あ、ご安心ください。同性婚の合法化は、元より着々と進めておりますので」

「進めてたの!?

 あー……また始まった……

 赤ん坊の身だというのに、その心労にウンザリしてオレは天井を仰ぐ。後頭部に当たるティファの胸は、ちょうどいい枕になるなぁ──

 ──と、思っていたら。

 ふと気づくと、天井を仰いだその視線の端に、割烹着を着て、お盆を持ちながら給仕に勤しむユーリが見えた。

 それはもう、大層不満げな顔をしながら。

(……なんだよユーリ、その不満げな顔は)

「はあぁぁぁ……これだからチート転生者は……」

 ユーリは、かぶりを振って盛大なため息をつく。

(どういう意味だよ?)

「右手には悪役令嬢、左手にはボーイッシュ美少女、さらには、スレンダーのくせにお胸は豊満な美女に抱っこされつつ、あろうことかそのお乳を枕にして……この先いったい、どんだけハーレムを増やす気なんだか……」

(ちょっと待て!? オレは別に狙ってこうしているわけじゃ──)

「やれやれ。チート転生者はみんな同じことを言うんですよ。まったく、アオイさんは本当にまったく。女性にだらしなさ過ぎると、いつか後ろから刺されますよ?」

(怖いこと言うな!?

 オレの言い分も聞かず、ユーリは「やれやれまったく……」などとぼやきながら学食の奥へと消えていく。

(おいちょっとユーリ! ティファに抱っこされてるのだってお前のせい──)

 だがオレの制止は、フローランスとマナの声に掻き消された。

「……アオイ様? わたくし、不倫とか浮気とか二号さんとかは許せないタチですのよ?」

「やっぱりアオイって、そーゆーいかがわしいコトが目的だったんだ……」

(おい待てお前ら! だからオレはそういう気は一切まったく断じてないし、そもそも子供ティーンには興味はないんだが!?

「ならわたしでいいじゃない!」

 突如現れたのは、見た目は美女だが中身は老人、この学園のトップにしてド変態のミリアム・ラングハンス──ってかなぜテーブルの下から沸いて出た!?

「聡明で甲斐性もあって社会的地位も盤石なこのわたしこそがアオイにふさわしいのよ! 小娘なんかには負けないわよ!?

 それを聞いて、マナはモジモジしながらも言ってくる。

「わ、わたしは別に……そんなんじゃないし……アオイだってそういうの迷惑だって言うなら、別にプラトニックな関係だってぜんぜん……」

 逆にフローランスは怒号を上げた。

「ちょっとミリアム先生!? それは聞き捨てなりませんね! あなたがそこまで言うのなら、タイユフェル家の総力を挙げて受けて立ちますわよ!?

(だああああ! もういいから静まれよ!? オレはそんなことに悩んでいる暇はないんだってば!!

 この異世界が滅亡するまで残り数年。

 だというのにオレは、どうしょうもない色恋沙汰に悩まされる日々を送っていた……

第二話 いま以上の変態さんは願い下げですが……

 戦争の一歩手前、というか戦端くらいは開かれていたかも知れないフローランスとのいさかいが終結してから一週間が経っていた。

 その過程で、なぜかフローランスと結婚させられそうになったオレは、その誤解を解くべく、あの手この手で説明し──それこそ、同性だからと言えばそろそろ同性婚が合法になると言われ、まだ学生だからと言えば学校を辞めるというので──最終的に、オレは自分の正体を明かさざるを得なくなった。

 つまり、オレはまだ赤ん坊であるということをだ。

 まぁ諍いの最中にオレは赤ん坊に戻ってしまったので、いずれはバレるということもあったが。

 フローランスは何かと危ういし、そもそも敵対していた関係だから、オレの正体を明言するのには抵抗があったものの、婚約したと思い込んでいるフローランスを放っておいたら、またぞろ何をしでかすか分からない。

 だからやむを得なかったわけだが、これはなんとか功を奏した。

 さすがにゼロ歳児と結婚するわけにもいかないというのはフローランスも分かってくれたようで、結婚の話は、かろうじてリスケに──とりあえずオレが常時美少女になるまで保留、ということでギリギリ納得してくれた。

 できればオレが成人するまで待って欲しい(そうしたら恋愛熱も冷めてうやむやにできそう)とお願いしたが、「そんなに待ったら、わたくしはオバさんになってしまうではないですか!」と断固拒否された……中年だって悪くないぞ(涙)

 そんなどうしょうもない修羅場に陥っていたものだから、あっという間に一週間が経ってしまったのだ。だから本来の目的であった変身魔法の調査開発は大して進んでいない。

 とにかくオレは、この異世界を救うために来たわけだが、ポンコツ冥界人ユーリのせいで、赤ん坊からのリスタートと相成ってしまったわけで、赤ん坊の力では、授かったはずのチート能力のほとんどを使うことができない。

 だからそれを解決するための魔法が必要で、目下、その有力候補に挙がっているのが変身魔法なのだ。

 変身魔法でオレを十七歳の体に変身させれば、オレはチート能力を存分に発揮することができて、当面の目標である魔王討伐もできるはずだ。

 だが現状、変身魔法はユーリにしか扱えなくて、そのユーリは魔力がショボすぎるので、単独では二〇分程度しか変身状態を維持できない。

 そのユーリに、ティファとミリアムとが魔力供給しても三時間が限界だった。ユーリに魔力供給し続ければ変身魔法の持続時間は延びるのではないかと思って先日やってみたのだが、三時間を過ぎると、ユーリはいきなり白目を剥いて気絶した。

 どうやら、過大な魔力供給にユーリの精神が保たないらしい。メンタルも豆腐なのかよ……

 そんなわけでオレは、ユーリ以外の人間が変身魔法を使えるようにするか、それに変わる魔法を開発しなくちゃいけないのだが、分けの分からない痴話喧嘩に付き合わされた一週間だったわけだ。

 あいつらは、この異世界にオレがチート転生したことの重大さを分かっているのだろうか?

 唯一、ことの重大さを理解しているはずのミリアムですら、学食のテーブル下から沸いて出てくる始末なのだ。

 昼食も終わり、オレはティファの分身魔法(改)で美少女の身体を装着してから、ミリアムに小言をぶつける。

「まったく……お前はボウフラか何かか?」

「害虫扱いとかひどひ!?

 変身魔法が使えない現状では、とりあえずの代替手段として分身魔法で美少女の体を宛がっている。これだけではチート能力は使えないものの、自分の自由にできる体があるだけでも非常に助かっていた。

 この創意工夫はミリアムの発案だから感謝しなければならないのだが……普段の言動が変態すぎて、どうにも感謝の念が持てないなぁ……

「それでミリアム、何の用だよ?」

 昼休みも終わったので、フローランスとマナは渋々ながら教室に戻っていった。ユーリはそのまま学食でバイト、オレとティファは図書館で魔法の調べ物だ。

 そうしてミリアムは、オレたちに用があって沸いて出たらしく、移動がてらその用件を話し始めた。

「実は……ちょっと面倒なことになってね」

「いや……もう面倒事は勘弁してくれないか? この世界でのオレの役目は知ってるだろう? オレが、しょーもないことに手を焼くほどに世界滅亡が近づくんだぞ?」

「もちろんそれは理解してるわ。だからこっちで解決しようとしたんだけど、そうしたら彼女、変身魔法の使い手を知ってるって言い出してね」

「……変身魔法の使い手? っていうか『彼女』って誰だよ?」

 思わぬ朗報に、オレはミリアムをまじまじと見た。

「順を追って説明するとね……彼女というのは、セント・イブン教会の大教皇・ソフィーア四世。フローランスとの諍いを聞きつけて、アオイと直接話がしたいって言い出してね。その交換条件として、変身魔法の使い手を教えるってことなのよ」

「セント・イブン教会の大教皇って、お前らのボスってこと?」

「まぁ……名目上はそういうことになるわね」

 ……キナ臭い。

 なんだかとってもキナ臭いぞ?

「お前のボスってことは、どう考えたってお前以上のド変態じゃないか」

「どういう意味かしら!?

「っていうかお前、『面倒なこと』って言っただろ? つまりはそういうことなんだろ?」

「だからと言って、わたし以上の変態だとかはどういう見解なのよ!」

「え……お前まさか、自分が変態だという自覚はないのか……?」

「な、なによーーー!? そんなこと言うなら、アオイは悪役令嬢の自覚がないじゃない!」

「オイ待て!? オレが悪役令嬢なわけないだろ!? この前のフローランスへの所業は、言わば子供の躾けのようなものだからな!?

「フーン……子供とはいえ、もう手足も伸びきって子作りもできるカラダだというのに、それを躾けとか引くわぁ……」

「だから待て!? お前の言い回しがイヤらしいだけでオレは何も──」

「ちょ、ちょっと……アオイちゃんにミリアムさん?」

 オレとミリアムが言い争いを始めたので、ティファが割って入ってきた。

「だいぶ話が逸れていると思うんだけど……」

「う……そうだったな。と、とにかく、その大教皇様というのは、やっぱり一癖も二癖もある人間なんだろ?」

「それは……まぁねぇ……」

 この異世界には、偉くなるほどに変態度が上がっていくのだろうか?

 まともな感覚のティファや、以前知り合った行商人のクラハを見習って欲しい、というか、そういう普通の人間をトップに据えて欲しい。

 そうすれば、何かと色々こじれることもなかっただろうに……

「アオイが気乗りしないというのなら、変身魔法についてはわたしがなんとか聞き出してくるから、無理強いはしないわ」

「そんな、ボスに楯突くようなことして大丈夫なのか?」

「厳密に言えば、ソフィーアはわたしのボスって訳でもないから。まぁ政治的な立場としてはわたしの上にはなるけど、役割としては同列ってところね。わたしも大魔道士って称号があるし」

「ふーん……」

 オレは、腕組みをしながらいっとき考える。

 もうこれ以上、癖のある人間は願い下げではあるが、ソフィーアというのがそれなりに権力を持っているのなら、面識を作っておくのは悪くないかも知れない。

 でもなぁ……きっとやっぱり、頭がヤられてるんだろうしなぁ……

「ねぇアオイ……なんだかその目つき……わたしのことをだいぶ悪く思ってないかしら……?」

「オレの頭脳は何事も真実を見抜いているぞ?」

「どういう意味よ、それ……」

 そんなやりとりをしながら歩いていたら、もう図書館塔の入り口が見えてきた。オレは、図書館の到着を踏ん切りにして言った。

「分かった。その大教皇様とやらに会ってみるか」

第三話 お偉い人の前に連れて行ってはいけない人とは?

「はへー……なんと見事な礼拝堂でしょう」

 セント・イブン大聖堂に入るなり、ユーリが感嘆の声を出した。

 それもそのはず、大聖堂のメインホールとなる中央大礼拝堂は、一〇階分の吹き抜け尖塔の全面にステンドグラスが埋め込まれているという、荘厳極まりない内装だった。

 この異世界には魔法があるとはいえ、これほどの壮大な礼拝堂を作るのに、いったいどれだけ年月を費やしたのかを考えると気が遠くなってくる。

 そうして、これだけの巨大で重厚な建物を建築できるだけの権力が、セント・イブン教会にはある──またはあった──ということなのだろう。

 ユーリの感嘆を聞き、ミリアムが苦笑する。

「本当は、教会の事務室とかで面会すればいいんだけど……こういう演出が好きなのよ、うちのボスは」

「大聖堂に通されたのは、だたの演出かよ……」

 この大聖堂にやってきたのは、オレとミリアム、それとティファにユーリだ。ティファはオレの分身体維持のため、ユーリは変身魔法要員として、それぞれ同行している。

 マナとフローランスも来たがっていたのだが、なんだか面倒事を起こしそうなのでご遠慮頂いた。とくにフローランスは、教会と対立する貴族の娘なのだ。

 ちなみに、大聖堂までの道のりも馬車で数日かかるということだったので、オレが変身して浮遊魔法を使い、約二時ほどで到着した。

 変身魔法の持続時間は三時間で、帰りの魔力が足りないから今夜はここで一泊するつもりだ。敵陣というわけでもないし、ミリアムも付いていれば大丈夫だろう。

 そもそもオレは、貴族とも教会とも対立するつもりはないのだが……

「さっきソフィーアを呼び出しておいたから。もうすぐ来るはずよ」

 ミリアムがそう言ってからきっちり一分後、祭壇前面に設置されている巨大なパイプオルガンから音色が響きだした。

 美しくも厳かな音色が、大聖堂内に幾重にも反射していく。地球で言えばバッハとかが作曲してそうな音色だなぁ。

 オレは、隣に立っているミリアムに言った。

「お前んトコのボスは、本当に演出好きだな」

「……教会は、どんなときも神の威光を再現すべし、なんて古い考えをいまだ引きずっているのよ、あのバカは」

「そういえば、お前はどうして教会所属の魔道士なんてやってんだ?」

「魔法理論の最先端を学びたかっただけよ。別に神サマを信じているわけではないわ」

 この異世界では、様々な情報を握っているのは教会だそうだから、その最先端を学ぶためにはどうしても教会に所属していないといけなかったらしい。今では、王侯貴族の勢力拡大と共にそうではなくなりつつあるとのことだが。

「ソフィーアは、その教会権力を盛り返したいと考えているわ。だから今日も──」

 ミリアムがそんなことを説明していたら、パイプオルガンの音がやんだ。

 そうして祭壇上の脇に控えていた信徒らしき人物の一人が「セント・イブン教会大教皇・ソフィーア四世猊下のおな〜り〜」と甲高い声を上げる。

 そうして祭壇脇から、楚々そそと一人の女性が入場してきた。

 女性……というよりも、幼女が。

 なにげにオレは、大教皇がどういう人間かをミリアムから事前に聞いてはいたのだが、その幼さを目の当たりにするとやはり驚きを隠せない。

 そんな幼女が祭壇中央で立ち止まり、オレたちを見下ろす──と言っても幼女の身長が低いので、オレたちより視線がちょっと上にある程度だが。

 年の頃は五、六歳だろうか。自分の頭より大きな三角錐の帽子ミトラは今にもずり落ちそうで、ネコっ毛なのか髪の毛はピンピンと撥ねている。

 クリクリとした瞳は年相応に愛らしさを感じるのだが……大人びた感じの視線がその愛らしさを台無しにしていた。大人に憧れて背伸びをしている、という感じでもないので、見た目は幼いが実は成人している何かの種族……とかだろうか?

 その薄くて小さな唇が開いたかと思うと、ソプラノ調で舌足らずな言葉が発せられた。

「ご足労感謝するぞ、救世主どの。すでに聞いておると思うが妾がソフィーア四世、このセント・イブン教会を統べる大教皇なのじゃ」

「アアア、アオイさん!?

 隣のユーリが突然叫ぶ。

「のじゃロリっ娘ですよ! のじゃロリ娘!! まさか現実で目撃できるとは夢にも思いませんでしたョ!?

 興奮のあまり、のじゃロリ大教皇様に今にも飛びつかんとするユーリを、オレは頭からグイグイ押さえる。

「ちょ、ちょっとアオイさん!? 何をするんですか見えないじゃないですか、のじゃロリっ娘が!!

 そのユーリの剣幕に、のじゃロリ娘は一歩身を引いた。

「な、なんなのじゃこのむすめは……? 何をそんなに興奮しておる……?」

「きゃーーー素敵! 見た目と口調、そのギャップが堪らない!!

 ………………はぁ。

 やっぱりコイツ、連れてくるんじゃなかったわ……

(Kindle本に続く)

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