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転生したらチートだけど美少女に性転換ですョ(ToT) Vol.10

カバー

夏休みが終わって二学期に突入し、異世界組のメンバーは留学生として、アオイの高校に編入を果たす。

そうして中間テストではミリアムが実力を見せつけ、体育祭ではエレシュが無双し、そして待ちに待った学園祭では、アオイの心を射止めるため、みんなが奮起する!

しかしその裏では、多くの才能を付与されたユーリが暗躍して、異世界とネットの抜け道を利用してボロ儲け……!?

ラブコメと成り上がりが交差する第10巻! ぜひご一読ください!

試し読み

第一話 チックタッカー・結莉ちゃん!

 高校二年生になった最初の夏休み、結莉わたしは、蒼生さんに妙な話を持ちかけられました。

 なんでも、お小遣い程度のお金で海外旅行が出来るという話を。つまりほとんど無料で海外旅行だというのです。

 そんなあからさまに怪しい話に、わたしはとってもとっっっても怪しみましたが、しかしよくよく考えてみたら、そんな怪しい話に蒼生さん一人を向かわせるのも心配です。

 何しろ蒼生さんは、世間知らずのお嬢様なのですから。

 旧財閥系のお嬢様で、おうちも東京の文京区に広がる大邸宅。周囲の家々だって、威風堂々とした佇まいで車庫には高級外車がずらりと並んでいるわけですが、そんな真っ只中でも、とりわけだだっ広くて高級感が満載なおうちに住んでいるお嬢様なのですョ!

 ちなみにわたしんちは、その蒼生邸の近所にあるマンションの一室──たった一室なのですョ! 正確には三部屋ありますが、蒼生さんちと比べたら一室程度の広さも同然!

 ってか蒼生さんちは代々その辺の地主でもあったので、億ションの個室を持っているのではなく、億ションの棟そのものを持っていやがるんですがね! しかもいくつも!!

 そしてもちろん、親族経営会社から上場企業に至るまで、国内外の会社やら株やらを山のように持っていてお金はザックザク。日本がどれほど不況になろうとも、人類が存続している限り、働かなくても食うに困らないどころか遊びほうけていても未来永劫食っていけるという、とてつもない家のおじょーさんなのですよ蒼生さんは!

 まったくなんなのですかコレ!?

 人間はみな平等だって、昔の偉い人たちが口を揃えて宣っているでしょう!?

 でも現実は違うのです!

 生まれたその瞬間から、すでに成功と失敗が決まっているのです!

 まさに親ガチャ!!

 フー……フー……フー……

 ちょ、ちょっと興奮しすぎましたね。

 まぁとにもかくにも、蒼生さんってばそんな世間知らずなお嬢様ですから、ほぼ無料で海外に行けるだなんて話、ぜったい誰かに欺されたに決まっているのです。

 しかも最近友達になった女子たちと行くって言う話ですし……

 知り合って数カ月程度で、海外旅行までしますか普通?

 もしかしたら、その友達とやらに欺されているのでは? 何しろ蒼生さんは日本でも有数の大富豪ですから。

 だからわたしは、蒼生さんを救うため同行することに決めたのです。

 そうすると、まずその友達というのは驚くほどの美女美少女たちでした。

 テレビの画面越しにだって、これほどの美女美少女を見ることは希ですよ。アイドルユニットでもやらせれば、画面に出ているだけで人気ナンバーワンになれること間違いなしです。今だったら動画サイトのチックタックとかユイチューブとかでもいいかもしれません。

 それに悪巧みを考えているような人達には見えませんでしたが……というより、悪巧みを考えていたのは蒼生さん本人だったんですけどね。

 そしてソフィーアたんとも合流したあと、わたしたちが出向いた先というのが──

 ──なんと、別世界でした。

 海外なんてもんじゃありません。

 そもそも世界が違っていたのです。

 しかも、いきなりあの世だとかいうんですよ!?

 わたしは、集合場所だった学校の屋上から、蒼生さんに突き落とされたんじゃないかと思いましたね。このわたしの美貌を妬んで。

 ですが、冥界というあの世に来たのにわたしたちは死んではおらず、そこからさらに移動した先が、牧歌的な村でした。

 こうしてわたしは別世界へと降り立ったのです。

 蒼生さん風に言えば異世界というわけですよ。

 だからわたし、最初は意味不明で立ちくらみを覚えましたがしかし、海外旅行ならぬ異世界旅行をしていくうちに思ったのです。

 こんな超常現象を体験するなんてあり得ないことだというのに、わたしたち数人で独占していてもいいのかな……と。

 例えば、この世界には異なる別の場所があることを広く知らしめるだけでも、この世界は飛躍的に発展するはず。世界史の授業でも、新大陸の発見から、人類の躍進が始まったように。

 経済だけではなく、科学技術だって大いに発展することでしょう。なんと言っても魔法などという未知の力があるわけですし、冥界に至っては、地球の科学技術を遙かに凌駕したそれを持っていましたし。

 だから三つの世界が交わることで、それぞれの世界が共に発展していけるはずなのです……が、しかし。

 もちろん優秀なわたしは、ちゃんと考えたのです。

 科学や文化の水準がまるで違う人間同士が出会ってしまったら、どうなるのかを。

 かつての人類は、そこで戦争を起こし、物品や資源を強奪に搾取にとしてしまいました。

 あれから数百年が経ち、今の人類がそこまでおろかだとは思いたくありませんが、でもそうならないという保証はどこにもありません。

 さらに、冥界のテクノロジーは異世界や地球のそれを遙かに凌駕しているっぽいですから、むしろそれを知らしめては大混乱が起きかねません。

 そもそも冥界は、テクノロジーだけが突出しているわけではなく、あの世とのことですからね。本当にそうだとしたら、この世界の死生観や宗教観までひっくり返ってしまいます。

 人類の発展には、それぞれの世界の交流が望ましいけれど、しかしそれを一気になしては大混乱させてしまう恐れもある。

 ではどうすればいいのか?

 目の前に広がる可能性を、むざむざ潰してしまえばいいというのか……!?

 ふっふっふ……

 そこで超優秀なわたしは考えたのです。

 まずは『娯楽』として、別世界の……ことさら、ファンタジー感溢れる異世界の情報を広めていこうと。

 世界に混乱が来すかも知れないのは、ひとえに、それを早急にやってしまうからなのです。

 そうして人々の理解は追いつかないまま、功を焦った愚かな大人達が我先へと金脈に群がろうとする──だから失敗するのです。

 でもそれが娯楽情報だと誤認するならば?

 少なくとも、お金儲けに躍起な大人達は見向きもしないでしょう。

 そうして人畜無害な人達だけが、己の楽しみとしてその情報を享受する。

 しかしその情報は、きっと、人間の深層心理に浸透していき、いつしか、異世界とか冥界とかの世界を受け入れる素地が作られる……というわけです!

 もっともその素地形成は、もしかしたら一〇〇年くらい掛かるかも知れませんが、そのくらい、じっくりゆっくりやっていかないと、世界は大混乱してしまうかもしれませんからね!

 だからわたしはその素地を作るためにがんばろうと決意したのです!

 娯楽情報として、異世界のことをじわじわと広めていく伝道師になると!

 まぁ……その結果。

 ちょ〜っぴり小遣い程度のお金が入ってくるかも知れませんが、そのくらいは享受してもいいよね?

 どんな活動するにしても、おカネは必要だからね?

第二話 これが女子高の制服だ!

 蒼生オレたちが異世界旅行から帰ってきたのは、八月中旬を少し回ったところだった。

 その後は、異世界組のみんなに東京観光などをしてもらいつつ、オレは新学期に向けての準備も始めていた。

 まず何よりも、マナ、フローランス、ミリアム、ティファ、エレシュ──異世界組五人もの女子を学校に編入させねばならない。彼女たちはどう見ても外国人に見えるから、留学生という扱いにするのが妥当だろう。

 じいさんが学園理事長をやっているとはいえ、五人もの聴講生をねじ込むのはさすがに骨が折れそうだなぁ……とオレは考えながら、夏休み後半、家族旅行に出向いたその先で、じいさんが酒に酔っ払っているときに話を切り出したら……すんなりオッケーされる。

 さらに、酔いが覚めたときに知らぬ存ぜぬでは話にならないので、その場で各種書類にもサインしてもらった。

 ちなみにその書類は、魔王であるマナの契約魔法つき。ということで契約履行の際、多少おかしな点があったとしても誰にも気にされなくなるという。魔法ってヤバイくらいに便利だなぁ……

 まぁいずれにしても、これで五人を留学生として学園に入れてやることが可能となった。あとは制服やら教科書やらを用意すれば、二学期には間に合うはずだ。

 ということで、学生服店に異世界組五人とオレで訪れていた。結莉とソフィーアは面倒くさがってきていない。

「あ、あの……アオイさん……もう少し長いスカートはないものでしょうか……?」

 ハンガーに掛けられている、オレたち高校の制服を見て、エレシュが頬を赤らめて聞いてきた。

 今のエレシュは変身魔法で十七歳になっている。とはいえ、顔つきが多少幼くなった程度で、その印象はほとんど変わらない。髪の毛や肌の色つやも若返っているという印象はなかった。

 ということは元年齢からして若々しいわけで……元年齢は何歳なのか知らないけれどエレシュすげぇな。まぁ女神になるような人だったって話だから、歳を取らないのかもしれない。

 そんなことを考えていたら「あの、アオイさん?」と改めて声を掛けられたので、オレはハッとしてからエレシュに答えた。

「あー……このスカート丈の長さはオレも抵抗があったんだが……なんでも有名デザイナーがデザインした制服とのことで、この長さが標準なんだ」

 うちの制服のスカート丈は、ひざ上くらいの長さになっている。他校の標準はもっと長いはずだが、うちだけデフォルトでミニスカートなのだ。

 有名デザイナーがこの案を出してきたとき、教職員たちは渋面になったそうだが、うちのじいさんが気に入ってゴリ押ししたらしい。あのすけべじじいめ……

 まぁそのおかげで、その歳から受験数が倍増したらしいから、商売人としては上手くやれているんだろうけどさぁ……学校運営はビジネスとは違うわけで……

 だからオレは、嘆息混じりに言った。

「オレも最初は抵抗あったんだけど……どうにもならないから慣れるしかない」

「そ、そうですか……ですがわたしの年齢でこのスカート丈というのはあまりに痛々しいのではないかと……」

「いや、そんなことはないと思うけど」

 そもそもエレシュなら、変身魔法を使わずとも、あのスカートたけだって着こなせると思うけどな、余裕で。脚のラインも肌もすごく綺麗だし。

「ふふん……そんなんじゃ、ティーンの巣窟である学校ではやっていけないわよ!」

 などと言いつつやってきたのはミリアムだった。高校の制服を手渡されるや否や、更衣室に飛び込み、すぐさま着替えてきた。

 エレシュと同じく、変身魔法で十七歳に化けているが、こっちはけっこう若返った感があるな。お世辞抜きでも、元のミリアムが老けて見えるというわけではなかったが、オレからするとやはり年上のお姉さんという感じだったのだが。

 今は、渋谷とかで遊びまくっている女子高生にしか見えない……

 髪の色も、地毛とはいえ艶やかな赤毛だから、ことさら遊んでいる感じが出ていた。

 そんなミリアムに視線を移して、エレシュが惚れ惚れとした感じで言った。

「ミリアムさんは、よくお似合いですね……!」

「当たり前よ。そもそも魔法学園に在籍しているわけだし、学校の制服に違和感あるわけないじゃない」

 などとミリアムは言いながら、大きな胸を張った。胸回りはキツそうだから、仕立て直しをしてもらう必要はあるだろう。そうなると時間がかかるから、二学期開始時には既製品で我慢してもらうしかない。

 その後は、マナとフローランスも更衣室から出てきた。この二人に関しては、実年齢が十七歳とのことだったから、うちの制服を着ていてもまったく違和感がない。とてもよく似合っているしサマになっていた。

 あ、いや……マナは若く見えるけど、本当は二十代半ばなんだっけ? いやいや、変身魔法でわざわざ若く見せているんだっけ? でもなんで?

 オレが首を傾げていると、そのマナがミリアムに言った。

「学園に在籍していると言っても、それは教職員としてでしょ、ミリアムせんせい

 ことさら『先生』を強調するマナに、ミリアムが言い返す。

「何よ。普段は先生なんて思っていないくせに。それに今は、ぴっちぴちの十七歳なんだから」

「それ、わたしのおかげでしょう?」

「そうだけど、まぁわたしの場合、別に変身魔法がなくたってこの制服は似合うけどね」

 いやさすがに年を考えろよこの面子ではお前が最年長だろ……と思わず突っ込みたくなったが、そしたらまたぞろミリアムが喚きそうなのでオレはぐっと堪えた。

 すると、唯一変身魔法を使われていないフローランスが言った。

「それにしても、こちらの学生服というのも、魔法学園のものとそこまで大きく変わらないのですね」

「あ、ああ……そう言われてみれば、そうだよな」

 この中では唯一、実年齢=ニッポンの女子高生であるフローランスではあるのだが……

 持ち前の豪奢な巻き毛により、この中の誰よりも違和感あるかもしんない。

 まぁ……見た目が外国人風だから、ギリギリ許容できる範囲ではあるのだが。「あの髪型は異国の文化だからかな?」ってな感じで。

「アオイ様、どうかしら? わたくし、似合っておりますか?」

 フローランスは、クルリと一回転してそんなことを聞いてくる。回っている最中、ボリューム満点の巻き毛から、しゃらん……とみやびな音が聞こえてきそうだった。

「お、おう……似合ってるぞ。うちの学生服が、何段階か豪華になったように見える」

「そうですか! よかったですわ!」

 言ってから「この褒め言葉は微妙だったか?」と思ったが、それでもフローランスは喜んでいた。こうやって、いつも素直な笑顔ならいいんだけどなぁ……コイツは、ちょっと油断すると悪巧みをしかねないからな。まぁ可愛い程度の悪巧みだけれども。

 異世界での出来事を思い出していると、マナとミリアムもオレに聞いてきた。

「ねぇアオイ! わたしは? わたしは似合ってる?」とマナ。

「わたしだって似合ってるわよね!?」とミリアム。

「ああ、もちろん似合ってるって。ってかお前ら全員、元からとんでもない美女美少女なんだから、似合わないわけないだろ?」

 オレがそういうとマナが頬を赤らめ、ミリアムは満足げに頷いていた。

 そんなやりとりをしていたら、最後のティファが更衣室から出てきた。

「あの……アオイちゃん。この服、ちょっと胸がキツいわ」

「………………」

 ブラウスのボタンが留められず、胸の谷間を露わにさせながらティファが出てくる。

 学生服店に、オレたち以外お客さんはいないことが幸いだったな……店員さんも女性だし。その店員さんは「す、すみません! もう一回り大きいブラウスをお持ちしますね!」といって店の奥に引っ込んでいったが。

 いずれにしても、もし店内に男性がいてこんなティファを──とくにティーンの男子どもが目撃したら、鼻血を拭いて卒倒するかもしんない。

「ティファ……お前って、えらく胸がデカいんだな……」

 ミリアムもエレシュも胸は大きいが、ティファはさらにその一段階上だったとは。服の上からだとそこまでよく分からなかった。

 まぁかくいうオレも胸がデカくて、服が入らず困ることはあるのだが。前世では、オレとティファは親子だったそうだから、生まれ変わっても似ているのかなぁ?

 そんなティファを見て、他の面々が愕然としていた。

「す、すごいですねティファさん……」とエレシュ。

「女の魅力は胸のサイズじゃないわよ!?」とミリアム。

「お義母様……そこまでとは存じませんでしたわ……」とフローランス。

 マナにいたっては、口を大きく開けて絶句している……この中では、お胸が一番小さいようだし、実は気にしているのかな?

 とまぁそんなやりとりをしながら制服の採寸が進んでいく。

 観念して制服を着たエレシュは顔を真っ赤にさせていたが……二学期までになれておかないと、ずっと顔を赤くする羽目になるから、制服が出来たら、それを着てどこか遊びに行こうという話も出た。エレシュは泣きそうになっていたが。

 それにしても、制服を選ぶだけでこんなかしましくなるとはなぁ……異世界の人間って、みんな個性的で賑やかなものだ。

 これに結莉とソフィーアも加わったら、いったいどうなることやら……

 オレは新学期に思いを馳せて、苦笑するしかないのだった。

第三話 バズったですよ!?

 娯楽としての異世界情報をアップする──という方針を決めたのち、結莉わたしは、とりあえず、ちょくちょく使っていたインスタオンスに画像を投稿してみました。

 インスタオンスは写真投稿が中心のSNSなのですが、以前から使っていたのと、異世界で撮影していたのは写真だけだったのもあって。

 ですが、蒼生さんたちが写っている写真を投稿するわけにもいきません。

 なのでわたしがアップ出来る写真は、地平線の広がる草原とか、荘厳なフローランス城(正式名称は忘れました)とか、異国情緒溢れる街並みとかの写真になります。

 となると、さすがにインパクトは薄いかな? エルフの美しいお姉さんとか撮影していればよかったのですが、人物は撮っていなかったのです。

 だからわたしは、とりあえずの様子見ということで投稿してみました。

 もちろん身バレは怖いですから、元々持っている自分のアカウントとは別に投稿したのですが……

 そうしたら……

 なんと……

 とてつもなくバズったのですが!?

 インスタオンスは中学生のころからやっていて、例えば──友達と出掛けた先の食べ物とか、家族旅行した旅先の食べ物とか、通販で取り寄せた珍しい食べ物とか、そういう写真をたくさんアップしてきたというのに、ぜんぜんバズらなかったのですが……

 女子中学生・女子高生が食べてる食べ物とか、みんな食いつきそうなものですけどね? それとも食べ物写真がよくなかった? でも食事は、人間の三大欲求だって話ですし、みんな関心があるはずだし……

 あ、でも、異世界の食べ物のほうはバズっているから、やっぱり食べ物が悪いわけじゃないよね? ひとえに珍しさが足りなかったのでしょう。

 学生の身分では、そんな遠出も出来ませんから、ごくありふれた食べ物になってしまうのですよ。

 まぁいずれにしても異世界の風景写真やグルメ写真を、たった数枚アップしただけでバズりまくりなのです!

 やはり、大衆が求めているのは物珍しさということなのですね!

 であればSNSなんてラクショーですよ!

 なぜならわたしは、異世界旅行という、この地上で、わたしと蒼生さんとソフィーアさんしか行ったことのない、ひっじょーにレアで貴重な体験と情報を持っているのですから!

 しかも、音声認証一つで冥界と異世界に行けるのですから!!

 さきほども試してみましたが、やはり簡単に冥界へ行くことが出来ました。ほぼあの世だという話なのに、声一つで行けてしまうとは……未だに驚きですよ。

 ですが、ここで一つ問題が浮上してきました。

「インスタだと、直接的な収益化は出来ないんですよね……」

 インスタオンスでどんなにバズったところで、直接的な広告収入はありません、今のところは。

 有名になったら、企業からのコラボとかで収入を得られるようですが、わたしはまだ高校生ですから契約とかどうなるのかよく分かりませんし、あと打ち合わせとかも必要でしょうし、そうなると面倒なんですよね。そもそも顔出しとかしたくありませんし。

 グッズ販売とかも、元手がなければ厳しいですし。受注生産で販売できるサービスもあるようですが、グッズの企画を考えたりするのも面倒です。そもそもモノを介すと、いろんな人や会社が間に挟まるので、わたしの取り分が減ってしまいます!

 であればやはり、お金が自動で振り込まれる仕組みのあるSNSのほうがラクでよさそうです。それなら、お父さんにアカウントを作ってもらえば事済みますし。

 そういうアカウントを作ったらあとは、音声認証ひとつで異世界に出向き、スマホでちょろちょろっと撮影してくるだけ。それだけで、人が集まるほどにお金も集まるという自動販売機の完成です!

 交通費も宿泊費も掛からず、たぶん、放課後のちょっとした時間だけで撮影も終わります!

 なんてローリスク・ハイリターンなコンテンツビジネスなのでしょう!?

 というわけでわたしは、直接の収益化が出来るSNSを探します……となるとやっぱり世間の流行は動画なのですよ。

 となると、ユイチューブとチックタックがいいでしょうね。

 ユイチューブは動画SNSの老舗のようなサイトで、再生回数に応じて広告費を支払ってくれます。あと視聴者からお金を直接受け取れる投げ銭的な仕組みもあります。

 チックタックはここ数年でぐっと伸びてきたSNSで、ショート動画が特徴です。今のところ視聴者からの投げ銭だけのようですが、動画を作るのは簡単そうだしいいですね。

「むふふ……いいですよ……もう、お金持ちになる未来しか見えませんよ!?

 わたしはベッドで横になりながら、思わずニヤける顔を止めることが出来ません。

 もしこれで、毎月三〇万円とか入ってきたら……な、何を買おう……? ひょっとしたら五〇万円くらいになるかも!?

 あくせくバイトをするわけでもなく、ちょろっと、異世界に跳んで動画撮影するだけで、毎月何十万円も自動的に振り込まれているだなんて……

 いつも、指をくわえて見ているだけだったウインドウの向こう側にある洋服とか!

 ずっと欲しかったあのブランドモノのバッグとか!

 高性能カメラ付きの最新スマホとか!

 なんでも買い放題じゃないですか!?

 そんなバラ色の生活は、もう目前に迫ってきている!

 インスタオンスで異世界画像がバズりまくりなのですから、バラ色生活は確実と言っても過言ではありません!!

「くっくっく……愚かな大衆どもよ……せいぜいこのわたしに貢ぐがよい……」

 あ、貢いでくれてるのは広告を出している企業様でしたね? これからお世話になります、はい。

 まぁいずれにしても、インスタオンスの反応を見る限り、わたしがアップしている写真はCGか何かだと思われているようですが、それでも別に構いません。人さえ集まればいいのですから。

 いっそ、女子高生CGクリエイターとでも銘打って活動しますかね!

「ふふふ……そうしたら明日から、さっそく動画の撮影に、異世界へ跳ばなくては」

 わたしは、インスタオンスでうなぎ登りの表示回数を見つめながら、にんまりとほくそ笑むのでした。

(Kindle本に続く)

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