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第3話
フルーレと初詣

「旺真の言っていた通り……街の雰囲気が一変しましたね……!」

 クリスマスもそのパーティーも、なんとか事なきを得て無事終了。

 そうして年末に入ったその修行帰り、旺真、フルーレ、アストリッドが最寄り駅から出ると、フルーレが駅前の様子を眺めて感心していた。

「まるで違う国に来たかのようです……! 人間界は、どこの国もこんな感じに様変わりするのですか?」

 しゃべるのも億劫なほど修行で疲れている旺真だったが、子供のような好奇心でフルーレが聞いてくるので、ぼんやりしていた思考に鞭を打って答えた。

「あー……オレも海外で年越ししたことなんてないから分からないけれど……たぶん、雰囲気がガラリと変わるのは日本だけじゃないかな。この国は、他国の文化を採り入れるのが好きなんだよ」

「そうなのですか。ということは、今の雰囲気も他国のものなのでしょうか?」

「いや……今こそが日本独自の雰囲気じゃないかな。まぁ……伝統文化とかはよく知らないけど」

 日本独自というのならば、クリスマスの雰囲気も相当にアレンジされているのだろうと旺真は思うが、今はその説明をする気力が沸かなかった。

 フルーレと共に周囲を眺めていたアストリッドも聞いてくる。

「あの店に飾ってある植物は何かしら? 以前はあんなものなかったはずだけど」

「アレは門松だよ。正月飾りと言ってな、ええっと確か……神様をお迎えするための装飾品だっけか?」

 改めて問われてみると、正月飾りの意味合いを旺真はよく知らない。なのでスマホを取り出して調べようとしたらアストリッドが言ってきた。

「神様ねぇ……人間界に広く浸透している概念であることは知っているけれど、わたしたち魔族にはよく分からないのよね」

「へぇ? 魔界には宗教とか信仰とかないのか?」

「ええ。そういう概念はないわ」

「まぁ確かに……『魔族』と名がつく連中が、神様を崇拝するのもおかしな話かもな」

 旺真の理解では、少なくとも日本で言うところの神様は、自然崇拝から始まったんじゃないかと思うのだが、肉体が強固な魔族は、そもそも自然を畏れ敬う必要はなかったのかもしれない。

 地震や津波が来ても呪文1つで空を飛べるし、病気にも相当強いらしいし、体力があるから長期の飢餓にも耐えられたと考えられる。

 であれば自然災害を畏れたりはしないのだろう。それよりも、隣にいる魔族のほうがよほど脅威だと考えるに違いない。

 そんなことを旺真がボンヤリ考えていたら、アストリッドが話を続けた。

「そもそも、実在しない生物を尊敬しているということが意味不明ね」

「うん……それ以上の発言はやめとこうか。下手すると刺されるから」

「そうなの? こちらもけっこう物騒なのね」

 フルーレが補足してくる。

「魔界でも、現皇帝を尊敬している魔族は多いですよ? さらには亡くなった皇帝を尊敬している団体もありますから、それに近い感覚だとわたくしは理解しているのですけれども」

「なるほど……けど、尊敬と信仰はまた別ものなんだがなぁ……でもまぁ理解の手助けにはなるかもな」

 そんなことを言いながら、旺真はふとひらめく。

「そうだ。なら大晦日に年越し参拝でもしてみるか。すげぇ混んでいるとは思うけど、それも含めて、二人には珍しい経験になるだろうし」

 旺真のその提案に、フルーレは笑顔になる。

「いいですね! 特別なイベントは、異国の文化を知るいい機会ですし」

 アストリッドは、眉を少しひそめながらも言ってきた。

「警護的には、人手の多いところに連れ出したくはないのだけれど……まぁいいでしょう。現状で襲撃があるとも思えないし」

 そんなわけで、旺真たちは年越し参拝をすることになった。

 

* * *

 

 大晦日の年越し参拝は、旺真たち三人の他に、実花も行くことになった。

 ちなみに実花からは「今年の年末進行も乗り切ったわ……なんとかね」と聞いて、旺真は胸を撫で下ろす。もっとも、本社が入っていたビルが(フルーレのせいで)倒壊寸前になったから、結局ほとんどの案件がリスケになったそうだが。

 実花曰く──

「リスケになった分の収支については、今ごろ経営陣が頭を抱えているでしょうけどね。いつも無茶ぶりするばかりなんだから、たまには頭を使えって感じよ」

 ──とのことだった。

 そんな話をしながら、大晦日の夜に向かっているのは明治神宮だ。

 実花と相談した結果、有名どころでかつ近いし、外国人のような二人を連れて行くのにはちょうどいいだろうということになった。

 神宮へ向かう道中では、晴れ着を着ている人もチラホラと見受けられる。その姿にフルーレが目を留めた。

「あの衣装は、また変わった形をしていますね?」

 その疑問に旺真が答える。

「ああ、アレは着物と言ってな。今日のようなイベントやお祝い事の際に着るんだ。この国の民族衣装だな」

「そうなのですか。なんだかとても華やかですね」

「今回は準備が間に合わなかったけど、何かの機会に取り寄せようか? 確かレンタルできるはずだし」

「ですが、わたくしに似合うでしょうか……?」

 そう問われて旺真は、金髪美少女の着物姿を思い浮かべる。

 外国人風の顔立ちでありながら着物を着こなすその姿は、想像するだけで魅力的に思えて、旺真は今すぐにでも見たい衝動に駆られた。

「ああ、似合うと思うぞ」

「そ、そうですか……? 旺真がそう言うなら、着てみるのもいいかもですね……」

 フルーレが頬を赤らめながらうつむくが、旺真はそれに気づかず、「もしかすると実店舗のレンタルショップは、正月でもやっているのかも……」と言いながらスマホで検索を始める。

 そんな雑談をしながら電車に乗り込み、そうして原宿駅の臨時ホームに降り立つころには、車内もホームも人で溢れ返っていた。

 フルーレが目を丸くする。

「な、なんなのですか!? この人だかりは……!」

「みんな参拝客だよ! はぐれないように気をつけてくれ!」

 駅のホームから押し合いへし合い状態になり、フルーレは、まるで人の海に溺れているかのように、顔を上に向けてアップアップしていた。

 比較的背の高いアストリッドも、あまりの人の数に唖然としている。

「ちょ、ちょっと旺真! こんなに人がいるなんて聞いてないわよ!?」

「オレもこれほどとは思わなかったんだよ!」

「これじゃあフルーレを守れない! 防御結界を張るわ!」

「や、やめてくれ! 人が押しのけられて事故るぞ!?」

 大声でそんなやりとりをしていても、周囲の喧騒に掻き消されて、二人の会話に見向きする者はいない。

 そんな人の流れに飲み込まれそうになって、旺真はせめてフルーレとはぐれないようにと彼女の手を取った。

「お、旺真!?」

「手を繋いで、はぐれないようにしよう!」

「わ、分かりました……!?」

 フルーレの口から出ている白い息が、真っ赤に染まる顔の湯気のように見えたが、しかし旺真はそれどころではない。

 やや後方にいるアストリッドに、旺真が振り向いて言った。

「アストリッドは小田さんを頼む!」

「まったく……! 仕方がないわね……!」

 黒山の中をアストリッドがもぞもぞと動き、これまたアップアップしている実花と合流。どうやらあちらも手を繋いだようだ。

 そんな感じで原宿駅の臨時ホームからようやく抜けだし、境内の参道に入ると、四人一緒に歩くことができるようになった。

 さきほどのような押し合いへし合いではなくなったものの、広々としているはずの参道は、大勢の人が歩いたり、写真を撮ったりしている。

 普通に歩ける程度にはなったのを見て、アストリッドが旺真に言った。

「あなた、いつまでフルーレの手を取っているのかしら?」

「え? あ、悪い!」

 無意識にフルーレの手を取っていたものだから、旺真は慌てて手を離した。

「これくらいの人混みなら、もう大丈夫そうだな……!」

「そ、そうですね! 念話もできるし、スマホとやらも持ってきましたから!」

 そんな感じでギクシャクしながら参道を歩いて行く。

 本来なら静寂が支配しているであろう森の中の参道は、この年末年始は人で溢れんばかりだった。そんな混雑を目の当たりにして、フルーレが興奮気味に言ってくる。

「それにしてもすごいですね! これほど多くの人に尊敬されている神様というのは……!」

 フルーレは少々勘違いしているようで、旺真が説明する。

「海外のことはオレもよく知らないが、少なくとも日本では、神様を尊敬しているから集まっているわけじゃない……と思うぞ?」

 もちろん信心深い人が参拝をするケースもあるだろうが、今ここにいる初詣客のほとんどは、単に、年末年始の恒例行事に参加する程度の感覚だろうと旺真は思う。

 しかしそこには、少なからず御利益や厄払いの期待感もある。

 そもそも神様や信仰という概念が存在しない魔界の住人に、その辺を理解してもらうのは非常にやっかいだった。

 大鳥居付近にくると人の流れは止まり渋滞を起こし始めたので、旺真と実花は、その辺のニュアンスを魔界の住人にじっくり説明し始めるが困難を極めた。

 そうして参拝客の列に並びながら、ああでもないこうでもないと30分くらい話し合って、ようやく見いだした例え話はこうだった。

 フルーレが、ポンと両手を叩いて大きく頷く。

「なるほど……! ハツモウデという行為は、宝くじを買うようなことで、だからゴリヤクを期待するということなのですね!」

 神様にでも聞かれたらバチを当てられそうなその結論に、旺真は顔を引きつらせながらも頷いた。

「ま、まぁ……そんなところだ」

 信仰のない魔界でも『運の良し悪し』という概念はあった。魔族は、実力主義の戦闘民族のように旺真には見えるが、しかしだからこそ『運』という概念はあるのだろう。

 スポーツ同様、戦闘においても、必ずしも強者が勝者になるわけではないのだから。

 さらに魔界の市井には宝くじもあるとのことだったから、運については人間界と同じ認識だった。

 もちろん、宝くじを主催する側であるフルーレたち皇族は買ったこともないそうだが、魔界の民が熱心に購入していることは知っている。

 だからまったく未知の概念よりも、見聞きしている概念のほうが理解しやすいと考えた旺真と実花は、神社への初詣を宝くじ売り場に例えることで決着した。

 実花も苦笑しながら説明する。

「この先に本殿があるんだけど、そこにお賽銭を入れるのよ。まぁそれが御利益の購入代金ってところかしらね」

 フルーレは、無邪気な子供のように実花に聞いた。

「ゴリヤクというのは、売り切れになったりしないのですか? これだけの人がいるのですから、急いだ方がよくないですか?」

「大丈夫よ。御利益は……そうねぇ、無限に湧き出てくる水みたいなものだから」

「そ、そうなのですか……! 魔界の宝くじでも、民の全員に分け与えたら財政破綻してしまいますのに……神様がこれほどに人気なのも頷けますね……」

「そぉよ〜。霊験あらたかな存在なんだから。皇女様だからって失礼があっては駄目よ?」

「わ、分かりました! では王族皇族と同等の待遇で接します……! ああ、でもわたくし、こちらの礼儀作法を知りません! どうしたら……!?」

 実花にからかわれていることにも気づかずにフルーレが慌て出したので、旺真がやんわりと訂正した。

「そんなにかしこまらなくても大丈夫だって。そもそも、神様って見えないし」

「え……? ど、どういうことですか? 皆さん、神様に謁見するために、これほどに並んでいるのですよね……?」

 またぞろ話がややこしくなってきて、旺真は再び頭を捻らなくてはならなくなった。

「えーと……ほら、フルーレの親父さんだって、民衆の前に姿を現すことは希なんじゃないか?」

「ああ、なるほど! 確かに、これほどの数を相手に、間近で姿を現すことは滅多にありませんね」

「こちらの神様もそんなところさ」

「そうですか……しかし目の前にいるかどうかと礼儀作法とはまた別の話では?」

「う……まぁなぁ……えっと小田さん、参拝のときにやる柏手かしわでって、正式にはどうやるんでしたっけ?」

「そ、そう聞かれると……わたしもよく知らないな……」

 そんな人間二人の会話を聞いて、アストリッドが呆れた様子で言ってくる。

「あなたたち、自国の礼儀作法も知らないの?」

 旺真が「う……」と言葉に詰まるが、言い分けを試みる。

「フルーレもアストリッドも、母国では為政者や官僚みたいなものだろ? この国だって、その手の連中は礼儀作法に詳しいだろうけどさ」

 旺真の言い分けに実花も乗ってくる。

「そ、そうそう! わたしたちはごく普通の一般人だから! そんな神様とか王様とか接する機会なんて早々ないのよ!」

 神様と接する人間なんていないのでは? と旺真は思うも、話がややこしくなりそうだったのでスルーする。

 そんな二人の言い分けに、アストリッドは「そんなものかしらね……」と言ってから続けた。

「とはいえ困ったわね。わたしも、こちらの礼儀作法は知らないし……」

 怖い物知らずのように見えるアストリッドも、やはり宮仕えが長いとあってか、格式や作法にはこだわるようだった。

 よくよく考えてみれば、フルーレには『帝国の姫』であることを常日頃からうるさく言っているし、礼儀を気にするのは不思議でもない。

 そんな話をしていたら、ちょうど、参道の途中で参拝の方法についての大型の街頭ディスプレイが設置されていたことに気づく。

 旺真がそれを指差して二人に言った。

「あ、ほらほら。あのディスプレイで参拝方法が説明されてる。あの通りにやれば大丈夫だよ」

 フルーレは、その街頭ディスプレイを一通り見てから言った。

「魔界の最敬礼と、やり方が似ていますね」

「そうなのか?」

「ええ……文化交流もほぼないというのに不思議なものです」

 そうして一時間ほど行列に並び、四人はようやく本殿前にまでやってくる。

 いよいよ極まってきた人混みに、フルーレは目を白黒させていた。

「こ、これは……! こんなに賑やかな謁見は初めてです……!」

 ほとんど怒号と言ってもいいほどのアナウンスがそこら中から聞こえてきて、人々は我先にと、そして楽しそうにお賽銭を投げ入れている。

 フルーレの背丈は、人間の女性と同等だから、周囲で何が行われているのかはよく見えていないに違いない。

 戸惑うフルーレに、旺真が言った。

「ほらフルーレ、このお金を本殿に向かって投げ入れるんだ」

「これだけでいいのですか?」

「ああ。金額の大小は関係ないんだ、たぶんな」

「たぶんって……」

 フルーレはオロオロしながらも、それでも、周囲は忙しない最中さなかだというのに、さきほど見た正しい参拝方法をしっかり行う。アストリッドも、動画内容と寸分違わぬ動きで参拝した。

 一緒に動画を見ていたはずの旺真と実花のほうが、わたわたと賽銭を投げ入れる程度しかできない体たらくだった。

 あっという間に参拝が終わり、追い立てられるかのように出口のほうに押しやられながら旺真が言った。

「魔族って、一度見ただけで覚えられるのか……ほんとすごいな」

 その感想に、アストリッドが特に嫌みでもなく言ってくる。

「むしろあなたたちは、どうしてさっき見たのにできていなかったの?」

「そ、それは……脳も臓器の一部で、魔族のほうがあらゆる臓器が発達しているから……」

「わたしには、ただの注意力不足だと思うけれど?」

「……ハイ、おっしゃる通りでぐぅのネも出ません……」

 旺真と実花が頭を垂れて降参のポーズを取っていると、フルーレが言ってくる。

「今のサンパイで、ゴリヤクが与えられたのですか?」

「ああ、そうだよ。アッサリしたものだろ?」

「そうですね。特段変わった感覚もありませんし……ゴリヤクとは、魔力みたいなものだと思っていたのですが」

 そう言いながら、フルーレは自分の手のひらを眺めていた。旺真は苦笑しながら説明する。

「まぁ確かに、魔力みたいなものかもしれないけれど、御利益ってのは人知れず作用するものだから、感じ取れるものでもないんだよ」

「そうなのですか。でも、今ので間違いないというのなら問題ありませんね」

 そう言いながらフルーレは笑顔になると、後ろから実花が声を掛けてきた。

「倉本君、せっかくだからお守りでも買っていかない?」

 実花が指を指す方向には、本殿に負けず劣らずの人だかりができていた。

 それを見たフルーレが首をかしげる。

「あちらにも人だかりができていますが、なんなのでしょうか?」

「あれは、お守りやお札なんかを売っている売店みたいなものだよ。そうだな、記念に何か買っていこうか」

 そうして四人は授与所に並ぶ。

 大変な賑わいでけっこう待たされたが、そんな待ち時間もフルーレたちにとっては一興のようだった。

 今日の感想なんかを言っているうちに順番が来て、旺真がお守りを見た。

「そうだな……オレたちに必要なのは厄除けとかか? あとは……必勝守なんてのもあるのか」

 ざっと見た後に、フルーレとアストリッドは、厄=魔族が少しでも近づいてこないことを願って厄除け守とした。

 そして旺真は、やはり必勝守だろうということになる。

 三人は案外あっさり決めたのだが、実花が思いのほか逡巡していた。

 そんな実花に、アストリッドがため息交じりに告げる。

「実花、ここは素直に縁結びにしておいたら?」

「な、何を言っているのカナあなたは!?」

 旺真は、「ああ、そういえば小田さんは適齢期だしな……」などと思いながら、後輩で異性の自分がいては買いにくいのかもしれないと気づき、フルーレのほうを向く。

「フルーレ、絵馬も買おうか。これに願い事を書くと叶うんだぞ?」

「本当ですか……!? 木材に書くだけで願い事が叶うなんて……どんな仕組みなのです?」

「それこそが御利益ってヤツだよ」

「す、すごいのですね……こちらの神様は……」

 そんな会話に、売り子をしている巫女さんも笑みを浮かべている。日本の神社に初めて来た外国人だと思っているのだろう。

「小田さん、オレたちは絵馬を吊してきますんで、じっくり選んでください」

「え!? あ、ちょっと倉本君! 変な気使わないでよ!?」

 と言われたがすでに絵馬を買ってしまったし、後ろも使えているので、実花とアストリッドに自分たちの進行方向を指し示してから、旺真とフルーレは絵馬掛けまで歩いて行く。

「フルーレはどんな願い事にする?」

「そうですね……どうしましょうか……」

「オレは『魔族撃退』って書きたいところだけど、さすがに怪しいしな。まぁ他人の絵馬なんて、じっくり読む人も早々いないだろうけど」

「願い事としてはちょっと物騒ですしね。できれば、もっと素敵なお願い事を……」

 いっとき黙考してから、フルーレがぽつりと言った。

「わたくしは『今日のような時間がずっと続きますように』でしょうか」

 そんなことを言って、ちょっと気恥ずかしそうに笑うフルーレに、旺真は思わず見とれてしまう。

 魔界の姫なんかに生まれてこなければ、きっとごく普通の、優しい女の子として幸せな生活をできただろうに、と旺真は思った。

「そうだな。その願い、絶対に叶えよう……!」

 そうしてフルーレの願いがこもった絵馬は、絵馬掛けに奉納されたのだった。

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