Extra Edition
だけど美 第1巻 番外編
「……あ」
キリ番ゲット転生者である
……性別、間違ってる?
パソコン上の申請フォームは、分けの分からない入力を様々に強いられるのですが、そこには確か性別欄があって『 』の
わたしは確かに、『』のほうにチェックを……
……ああ!? だから間違えたのか! 『男』が先なのか『女』が先なのかは、フォームによって違うから!
っていうかあの選択肢なんなの!? いらないでしょ!
アオイさんが男であることなんか一目見れば分かるじゃない! っていうか閻魔帳にも『男』って書いてあるじゃない!!
それなのに、転生申請で改めて選択させるってどういう了見よ!?
そもそも! ペーパーレスを激しく推進してるから転生申請もパソコンになったのに、どうしてこんな控えをプリントアウトしてくるの!?
この控えさえなければ、優雅なコーヒーブレイクを満喫しきれたというのに!
ああもう……!
ほんとに…………!
まぢで………………!
「ど、どぉしましょぉうぅぅ……」
わたしは途方に暮れて頭を抱えました。
こ、こんなことをしでかしたのがバレたら、またもやエレシュ係長に大目玉ですよ?
あの人、キレるとナニをしでかすか分からないのですよ?
下手したらタマ取られますョまぢで!?
「タマが無事だったとしても、どう考えても減給でしょコレ……」
この前の減給処分が終わったと思ったらエレシュ係長が難癖付けてきて、今度は6ヶ月間の減給処分真っ只中だというのに。
そのせいで生活費すら捻出できずに親から仕送りをもらっているというのに!
これ以上に減給期間が延びたら、どんだけ親に小言をいわれると思っているのか、あの係長は分かってません!
「ううう……なんとか……なんとかしなくては……」
こ、こうなったら……こうなったら、ですョ。
なんとか、なんっっっとかごまかすしか手はありません。
なぁに、大丈夫ですよ。性別が変わるくらい大したことじゃありません。
女勇者としてあの世界を救えばいいだけですからね?
大勢に影響はないのです!
ここでまた申請修正しているほうが時間のロスになって、異世界がなお危険にさらされるというものですよ。
あ、そだ。
一度でも転生申請したら、もう変更できないと言い切っちゃえばいいじゃない?
うんうん、それにすんごい美少女に生まれ変われるわけだし?
人って誰しも一度は性別入れ替わり願望を持つっていうし?
何しろ、男の娘って人気だしね!
よし決めた! アオイさんを説得しよう!
そのほうが、時間のロスがないし、ひいては異世界のためなんだから!
あ、そうだ! 転生時の記憶消去を免除するってことにしちゃおう!
キリ番ゲット転生はそもそも記憶消去されないんだけど、そこは方便というか? 方言というか?
「ふ、ふふふ……わ、わたしって天才なんじゃ……?」
こうして。
わたしは、不退転の覚悟で休憩室を後にしたのでした。
だから、なのでせう。
年齢設定が、デフォのままの0歳児だったことに気づかなかったのは。
下界に転生すると、もう本当に修正は効かないのでしたけれども、さらなる減給という窮地に立たされていたわたしには、どのみちそんな些細なミスに気づけるはずもなかったのです──
──っていうか!?
特別枠の転生者申請フォームだというのに、なんで年齢欄がデフォのままなのよ!? あのシステムの開発者、出てきなさいよ!?
(つづけ)
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