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Extra Edition

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だけど美 第1巻 番外編

第2話 なんで、わたしが戦場に!?

 アオイさんの転生設定を間違っただけだというのに、わたしは異世界へ出向扱いとなったのでした──

 ──ってちょっと!

 嘘でしょ!?

 異世界ってアレですよ!? 戦地のド真ん中なんですよ!

 アオイさんの国で例えるなら、ドンパチやってる海外のド真ん中に後方支援で派遣されるようなものですよ!?

 現に先日、異世界に来た早々戦闘に巻き込まれるわ、バカでかい熊に追いかけ回されるわ、さらには魔力を吸い尽くされたあげくにアオイさんに張り倒されるわ!?

 わたし、ただの区役所公務員なんですよ!?

 そんなパワハラ、許されるはずないじゃないですか!

 だからわたしはティファさんちの一室を借りて、エレシュ係長に電話をしたのです。

 すると係長は宣いました。

「あなたの出向は受理されてますが?」

「……はいぃ? い、いや係長? ここ、戦場のド真ん中ですよ?」

「はい、存じております」

「そんな戦地のド真ん中に、ただの地方公務員で冥界役場勤めのわたしが出向けるはずが……」

「上には特例を認めさせました。安心してください」

「安心できませんよ!?」

 ナニその特例!? ただのお役所公務員を戦地に送り込む特例ってどういう特例!?

「とにかく。本来であればわたしが出向きたいところですが、危機的世界に陥っているのはあなたの担当世界だけではありませんし、どうにも手が回らないのです。戦地にただの公務員を送り込まねばならないほどに、あなたのミスは重大事であることを知りなさい!」

「そ、そ、そんな!? 性別と年齢をちょっと間違っただけじゃないですか!?」

「それが大問題だと言っているのです! 転生申請は、十分に注意するようにとあれほどいったのに! しかもあなた、これが最初じゃないでしょう!?」

「で、でもでも、ここほんとに戦場なんですよ!?」

「安心しなさい。ちゃんと、わたしが閻魔係を担当してあげます」

「死ヌこと前提ですねソレ!?」

 くぅ……!

 冥界人は、死者と日々接しているだけあって、どうにも死生観が麻痺していますョ!?

 まるで「骨は拾ってあげます」といわんばかりの態度にわたしが呆然としていると、エレシュ係長が脅迫じみたことをいってきます。

「いいですか? あなたの辞退は認めませんよ? そもそも懲戒免職もやむなしの重大ミスを、なんとかわたしのほうで取り繕った結果が異世界出向なのです。ここで出向を辞退したら、あなたの免職は免れませんよ?」

「な……な……な……」

 あまりの物言いように、わたしは二の句が継げなくなりました。

「とにかく、転生者であるアオイさんに誠心誠意尽くすように。彼……いえ彼女かもしれませんが、とにかくアオイさんがお亡くなりになるようなことがあれば、その異世界はおしまいなのですからね!」

 そういって、エレシュ係長は一方的に通話を切ってしまいました。

「そ……そ……そ……」

 誰もいない一室で、わたしは「そんなバカな!?」と悲鳴を上げるしかなかったのでした……

(つづく?)

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