Extra Edition
だけど美 第1巻 番外編
わたしは、界港到着ロビーに到着するや否や、その場でへたり込みました。
「し……死ヌかと思った〜〜〜……」
すると、係の人がすかさず声をかけてきます。
「あ〜、ソコの人、止まらずに進んでくださいよ〜」
わたしは、二日酔いのようにガンガン痛む頭を押さえながらも、東京ドームほどもある転送ポートの中をよれよれと歩き出します。どうせなら、回復魔法でアルコールを完全に抜いてもらってから戻ればよかったですョ。
そうしてわたしは、第435旅客ターミナルのコンコースに出てきました。
うひゃぁ……相変わらずの混雑ぶりですね界港は。
100階分のぶち抜き天井は(っていうか天井みえない)は解放感があるものの、コンコースをせわしなく行き交う大勢の冥界人のせいで、なにかこう息苦しさを感じます。
そもそも、コンコースが広すぎて徒歩での移動が困難なので、自動運転カーゴが冥界人を荷物のように運んでいるのですが、そんな光景がせわしなさに拍車がかかるんですよねぇ。
まぁこの広さのおかげで、ほとんど待つことなく出界できるのが救いでもあるんですけども。
わたしたち冥界人が下界に出向くことは希ですが、下界はそれこそ星の数ほどあるわけで、そこに出入界するここ界港は、広大な面積が必要で、膨大な冥界人が出入りしているのです。
それもみんな公務のトラブルで行き来しているものですから、どことなく殺伐として雰囲気が、巨大な旅客ターミナルに蔓延していました。
まぁその中でも、晴れやかな顔をしている人は、トラブルを無事解決して帰界してきた人達でしょう。
わたしのようにね!
「はーもー、二日酔いでダルいわ頭痛いわ、禄に寝てないから寝不足だわで……とりあえずコーヒーでも飲も」
わたしはコンコース内にあるラウンジに立ち寄ると、カフェラテとミルフィーユのセットを注文しました。
そしてミルフィールを一口つまみながら、ようやく人心地つきます。
「それにしても散々な目に遭いましたよ……これからどうしましょうかね……」
いちど冥界役場に戻って異世界出向の取消を申請する……なんてのがエレシュ係長に通用すれば、こんな苦労はしてませんよねぇ。
わたしは「はぁ……」とため息をつきながらスマホを取り出そうとしたのですが、スマホがありません。
ああもぅ……スマホはアオイさんに貸しっぱなしでしたね。これではなんの情報も入ってこないし連絡も取れません。
わたしはラウンジに設置されている時計を見ます。冥界はいま午前中で、これから冥界役場に行ったらちょうどお昼時でしょうか。
「仕方が無い……いちど冥界役場に顔を出してみましょう」
そうすれば、同僚のアウローラちゃんに、エレシュ係長の様子を聞くことができるでしょう。
そう考えて、わたしは重い腰を上げたのでした。
(つづくと思う意志がつづかせる)
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