
LIGHT NOVEL
ローデシア姉妹と義姉妹になった
(義理の姉として、
なぜ心配なのかといえば、その体力のなさなのじゃ。
例えばちょっと庭球をすればすぐにバテるし、帝都内を少し走れば息切れするし……確かに魔法士は机にかじりつく者が多いと聞くが、それにしたって運動不足すぎじゃ!
何しろ運動不足は体によくないというしな。今はまだ若いからいいじゃろうが、これが三十代、四十代……そしておばあちゃんになったとき、あんな体力では果たして生き長らえるかどうか……
もちろん決して、彼奴らをからかって遊びたいなどという心境は一切ない。断じて存在しない。まったくもって微塵も欠片もあり得ないわけじゃ。
妾って、なんて妹思いなのじゃろう……!
ということで、妾はさっそく策を講じることにした!
「えっと……オフェルテ? こんな場所に呼び出して何するつもり……?」
そんなことをつぶやくヒナカは、不審な視線を妾に向けてくる。さらにはソマも、オドオドしながら周囲を見回していた。
「ここ……軍隊の演習場のようですが……」
そうして、妾達三人に同行してきたアルデもぽかんとしながら聞いてきた。
「軍隊の演習でも見学するのか?」
ちなみにティスリは呼んでいない。規格外の彼奴がいると、計画が台無しになるからな。
ということで妾は、帝都警備隊の演習場正門に突っ立つ三人に、とびっきりのウィンクをくれてやる!

「まぁ黙って付いてくるがよい。とっておきのレクリエーションを披露してやるぞ」
「帰る!」
せっかく妾がウィンクを送ったというのに、ヒナカはすぐさま踵を返した!
「おい待てヒナカ!? 妾の好意を無下にするつもりか……!」
「絶対に、わたし達をからかって遊ぶ気でしょ!」
「なぜバレている!?」
「ほらやっぱり!」
「ま、間違えた! 今のは間違えただけじゃ!」
「むしろ本音がダダ漏れなんでしょ! お姉ちゃん! 帰るよ!」
「え……で、でも……」
乗ってきた馬車へ、今にも戻ろうとするヒナカに、ソマはおろおろとするばかり。ソマのほうは、どうやら妾と遊びた──もとい妾の好意を理解してくれているようじゃな。
だから妾は、大仰にため息をついて見せた!
「はぁ……仕方がない。ソマも帰りたいというのならば止めはせんぞ?」
「え……そ、そうなの……?」
「ああ、その代わり……」
そして妾は、相変わらず呆けているアルデに近づくと……
その腕をとった!
「妾は、アルデとふたりっっっきりでレクリエーションを楽しむからな!」
「「……!?」」
妾のその宣言に、ヒナカの顔は引きつって、ソマはさらにアワアワしだす。
そうしてアルデが身じろぎしながら言ってきた。
「い、いやちょっと……!? すぐにくっついてくるなよオフェルテ……!」
「くっくっく……何を戸惑っておる。今はティスリもいないのじゃ。思う存分、妾を堪能するがよかろう?」
「ど、どういう意味だ……!?」
っていうか。
アルデが身じろぎするたびに……むしろ……
(逞しいこの胸に、妾の胸がめちゃくちゃ当たるのじゃがな!?)
いやむしろ当てているのだから……それはそれでいいのじゃが!?
な、なんというか!
わ、妾の繊細な部分までも刺激されて……!
(此奴、もしかしてワザとやっておるのか!?)
思わずドキドキしていたら、ヒナカが割って入ってきた!
「もう! 分かったよ! 一緒に行くからアルデから離れて!」
「ヒナカには左側が空いておるじゃろ?」
「そういう問題じゃない!!」
ということで妾は引き離されて──ちょっと残念なような、でもほっとしたような気持ちになりながらも、いよいよ演習場へと足を踏み入れる。
運動着に着替えてからそのグラウンドに出てみれば……
なぜか、大勢の警備隊員が待ち構えていて、大歓声をもって迎えられた。

そんな様子に、ソマはポカンとしながら聞いてくる。
「えっと……オフェルテ? これはどういう状況なの……?」
なぜ隊員がこんなに興奮しておるのかは……妾も聞かされていないので首を傾げるしかなかった。
「さぁなぁ……? 妾達を見学したいんじゃろうが……」
するとアルデが言ってくる。
「どういうことだ? オレ達が訓練を視察するんじゃなくて、オレ達が見られるってことか?」
「ふむ……まぁそういうことになるが……」
そして最後に、ヒナカが短い悲鳴をあげた。
「嫌な予感しかしないんですケド!?」
今日は、この姉妹と遊ぶこと──じゃなくて姉妹にトレーニングを付けることが目的だから、隊員達の見学は別に問題ないのじゃが……はて?
不可解な気分になっていると、警備隊長が妾の元に駆け寄ってきて、キビキビと最敬礼をしてから聞いてきた。
「殿下! ぜひとも我らにも、お立ち会いする栄誉をお与えください!」
「もちろん構わぬが……外野から見ていても、別に楽しいものでもないぞ?」
「滅相もございません! 我らにとって、これ以上の学びはございません!」
ふむ……企画した妾以外が見学しても、別に楽しくはないと思うのじゃが。
言ってみれば、子供が公園で遊んでいる姿を眺めているようなものじゃ。一緒に遊ばなくては面白くないわけで……
とはいえ妾達を出迎えた隊員達は、尋常でないほどの熱狂を帯びておるし、ここで断るというのも無粋じゃな。今回のレクリエーションの準備をしてくれた恩もあるし。
ということで妾は頷いた。
「相分かった。立ち会いを許可しよう」
「ありがたき幸せ!」
そうして大歓声がより一層膨れあがったところで、その歓声に負けない声でヒナカが叫んできた──演習場を指差して。
「ねぇちょっとオフェルテ!? あれはなんなの!?」
「ふむ……あれか」
まさしくあれこそが、この日のために妾が準備させた代物。題して──
「──あれはな。『貧弱極まりなくて老後が心配になる姉妹を鍛え上げる障害物』じゃ!」
「意味不明なんだけど!?」
「まったく……お主は理解というものを知らぬな?」
「もうほとんど理解しているけどあえて拒絶してるのよ!?」
大歓声の中、悲鳴を上げるヒナカに妾は自身の心配を話す。さらには当然、妾も一緒に遊──もとい参加するという説明もしたが、ヒナカは──
「余計なお世話なんですケド!?」
──案の定、拒否ってきた。
さらにはソマも悲鳴を上げる。
「わたしたちを心配してくれるのは嬉しいけど! でもいきなりあんな、訳の分からない軍事用の障害物なんか使ったら、わたしたち、老後を待たずに死んじゃうよ!?」
「お姉ちゃん欺されないで! コイツは心配なんて微塵もしてないから!! ただ単に面白がっているだけだから!」
「むぅ……ヒナカは酷いことを言う。妾だって、微塵くらいは心配しておるぞ?」
「微塵の意味分かってる!?」
まぁ拒絶されるのは分かっておったからな。だから妾はニヤリと笑う。
「ならばこうしよう。言ってみればこれは障害物競走なのじゃが──」
「そんな生易しいもんじゃないでしょあの機材は!?」
「──まぁヒナカよ、話は最後まで聞くがよい。例えこれが命を賭した
「デスゲームって言ってるじゃん!?」
「──だとしても妾とて鬼ではない。優勝者には、アルデとの一日デート権を進呈しようではないか!」
そうしてアルデに手を向ける妾じゃったが……
当のアルデは、顔をしかめていた。
「いやオレの意見は?」
「妾達のような美女とデートできるお主に、拒否権なんてあるわけなかろう?」
「拒否権くらいあるだろ!?」
しかしアルデには誰も取り合わず、ヒナカがさらに文句を言ってくる。
「優勝者といったって、体力オバケのオフェルテが1位になるに決まってるじゃん……!」
「それも分かっておる。故に妾にはハンディをつけよう」
「ハンディって、どんな?」
「スタートを遅らせるのと同時に、妾にデバフ魔法を掛けて構わぬ」
「デバフって……どのくらい?」
「お主達ができる最大限のをかけて構わぬぞ?」
妾がそういうと、ヒナカはソマに顔を向ける。
「お姉ちゃん……どう? オフェルテを完全拘束できる?」
「い、いや……拘束したら競技にならないんじゃ……」
「でも、なんでもいいって言ってるし」
開き直っているヒナカに、妾は呆れて声を掛けた。
「おいヒナカ。しっかり聞こえておるからな? 両手両足を縛るなど物理的なものはナシじゃぞ?」
「えー? でもお姉ちゃんの魔法だとそれしか用意されていないっていうか」
「まぁソマはそっちのほうが得意じゃろうが……」
「二人とも! わたしをどんな目で見ているのカナ!? アルデさんも顔を引きつらせないでください!?」
と言いながらも、どこか嬉しげに顔を赤らめるソマは……ため息をついてから話を続けた。
「もう……普通のデバフ魔法だって使えます。動きを鈍らせるとか、体力を制限するとか……でもそれが、オフェルテにどの程度効くかは分からないけど」
「そこは実力のうちということじゃな。妾に対して効かぬのならば、それはそれでやむなしということじゃ」
妾がそう説明すると、ヒナカもため息をついてから周りを見回す。
「はぁ……分かったよもう……どのみちこのままじゃ、引っ込みが付かないだろうし」
警備隊員達は、大歓声を上げながら、期待に……というか何かこう、血眼といっても過言ではない眼差しでこの姉妹を見ている……はて? どうにも妙な雰囲気じゃな?
だがいずれにしても、ようやく姉妹が承諾したところで……アルデが言ってきた。
「ならオレも参加するぜ? ちょっと面白そうだし」
そんなアルデに妾は言った。
「そう言うとは思っていたし、別に構わぬが……お主が優勝しても賞品はないぞ?」
「なんでだよ。オレが優勝したら、デートはナシだ、ナシ」
「なんじゃと……!?」
思いも寄らぬその申し出に、妾は数歩後ずさる。
「妾達のような美女とのデートができる機会を、みすみす棒に振るというのか……!?」
その驚愕に、しかしアルデはしれっと言ってくる……!
「棒に振るというか、元よりイヤだと言っているんだが?」
「……!?」
そ、そんな馬鹿な……!?
思わず妾が言葉を失っていると、ふくれっ面になったヒナカが言った。
「…………なんか、ムカついてきた」
それはそうじゃろう! 面と向かって拒否られているのじゃからな!?
この妾をもってしても、ショックのあまり二の句が継げなくなったほどなのじゃから……!
さらには内心でちょっと悲しくなってきていたら、手を腰に当てたヒナカがアルデに言っていた。
「どーせ、ティスリが怖いからとかそんな理由なんでしょ!」
「い、いや……そんなことは……!?」
「じゃあなに!? わたし達のことが嫌いなわけ!?」
「き、嫌いだなんて言ってないだろ……!」
「ならやっぱりティスリの目を気にしてるんだ!」
「くっ……そ、そうだよ! 悪いか……!?」
「開き直った!」
「とにかくオレも参加して、優勝したら拒否権をもらうからな! そうじゃなくっちゃ、お前らが優勝したってデートしないぞ!?」
「ふぅん……なら、優勝したら絶対にデートしてもらうからね!」
「おう、いいぜ? 本当に優勝できたら、だけどな」
得意げに笑うアルデにさらに頬を膨らませるヒナカは……そのふくれっ面のまま妾を見てくる。
「オフェルテ! アルデのハンディは、両手両足の拘束でいいよね!」
「おい待て!?」
妾が答える前に、アルデが大慌てで抗議する。
「足まで拘束されたらそもそも走れないだろ!?」
「ジャンプすれば?」
「さすがに無茶が過ぎるだろ!?」
などと言い合った末……アルデは妾よりさらに遅れてのスタートで、かつ両手を縛ることで話はまとまった。
アルデのやつ……手を縛られてなお、勝算があると見えるな。
いずれにしても……ここまでデートを拒否られるとは思わなんだ……
こうなったら是が非にでも妾が優勝して……デート当日に……
思いっきり煽ってやらねば気がすまぬ!
などと考えているうちに、ソマがデバフ魔法を妾とアルデに掛けて、さらには魔法の縄でアルデの両手を後ろ手に縛った。
「はぁ……はぁ……はぁ……あ、あの……」
その魔法によって魔力はおろか体力まで削られたらしいソマは、息を切らせて言ってくる。
「よ、よくよく考えたら……これってわたしがいちばん不利なのでは……!?」
そんなソマに、ヒナカは得意げに笑ってサムズアップをキメる。
「仕方がないじゃん! わたしは攻勢魔法しか使えないし」
「そ、それはそうだけど……!」
「だいじょーぶ! お姉ちゃんの分までデートを楽しむから!」
「何が大丈夫なのカナ!?」
そんなこんなで──
──悲鳴を上げるソマを引っ張って、妾達はスタートラインに着くのじゃった!
(to be continued…)
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