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孤高のクーデレ王女がご執心!? オレは王城追放の平民なのに、なぜか二人っきりで逃避行!Vol.4

孤高のクーデレ王女がご執心!? オレは王城追放の平民なのに、なぜか二人っきりで逃避行!Vol.4

今巻は待望の水着回!

南国の島で、美少女たちが水着姿を披露しながら思いっきりてぇてぇします!

ですがその前に、相変わらずの傍若無人な貴族達を懲らしめなければなりません。

前巻からの飲み会騒動をなんとか収拾させたあと、地方の高税をただすため郡庁へ向かいます。そこで地方貴族と衝突して冤罪に。ティスリが女王だとも知らずに(笑)

そんな感じで貴族達を懲らしめた一行は、夏休みということで、いよいよ南国の島へと出発します。

透明な海、様々なレジャーに夏祭り──そして美少女たちの水着が色鮮やかに際立ちます!

しかもティスリの恋敵(?)であるミアまで同行することになったので、アルデは終始滝汗! 果たしてアルデは、ティスリの嫉妬を上手く収めてこの旅行を乗り切ることができるのか!?

三角関係が加速する異世界ラブコメ第4弾、ぜひご一読くださいませ!

試し読み

第1話 二日酔いよりも心の傷のほうが大きいかもしんない

 アルデオレたち五人による飲み会が終わり、その翌日。

 昼飯時ひるめしどきになっても、ティスリは二階の自室から降りてくることはなかった。

「ティスリさん、大丈夫かしら……?」

 リビングに昼食を運びながらアサーニ母さんがつぶやく。隣で食器を運んでいたオレはそのつぶやきに答えた。

「いつもなら、昼くらいには多少なりとも回復しているはずなんだけど。でも昨日は、普段よりたくさん呑んでたからなぁ……」

 飲酒魔法が悪い方向に作用して、昨晩のティスリは、飲み会終盤まで寝落ちすることなく、かつお酒を大量に呑んでいた。量だけで言えば、オレよりぜんぜん多かったのだ。

 だから回復魔法を使ったとしても、まだ二日酔いで苦しんでいるのだろう。

 っていうか今回の場合、二日酔いよりも心の傷のほうが大きいかもしんないが。

 そんなわけで、あのティスリに、致命傷を与えたかもしれない我が妹・ユイナスは──まぁ昨日に限って言えばユイナスは悪くないが──リビングテーブルに食器を並べながら吐き捨てる。

「あんな女、もういなくなればいいのよ……!」

 すると同じく食事の準備を手伝っていたガット父さんに、ユイナスはたしなめられた。

「これユイナス。お世話になっている人に、そんなことを言ってはいけないよ」

「だって! 昨日はわたし、すっごく迷惑したんだから!」

「お酒の席の、ちょっとしたおふざけだったんだろう?」

「おふざけで、人の頭を撫で繰り回す普通!?」

「撫でられるくらい、別にいいじゃないか」

「よくないわよ!」

 一晩経っても、どうやらユイナスの怒りは収まらないらしい。

 ティスリが泥酔してからは、ユイナスは激しく絡まれていたからなぁ。

 しかも武芸にも秀でているティスリが、ユイナスの体を絶妙にホールドしているものだから、ユイナスはまったくもって逃げられなかった。

 酔っ払っていても、身につけた体術とかはまるで支障ないんだよな、ティスリのヤツ。これも天才ゆえなのだろうか?

 そうしてユイナスは抱きつかれたまま、頭を「よしよしよしよし……!」されたり、「ユイナスちゃん、かわいいでちゅね〜」と言われたり、「ああもぅ、辛抱堪りません! キスしちゃおうかしら!?」などとティスリが叫んだときは、いよいよマズイと思ってオレも止めたが。

 もうその頃には、ユイナスは疲労困憊のため、文句の一言も言えなくなっていた。

「思い出しただけでも身の毛がよだつのよあの女!」

 ということでユイナスは、未だに怒り心頭だった。

 まぁオレも、もうちょっと早く止めておけばよかったかな〜、なんて今さらながらに思ったりもしたが、ぶっちゃけ、面倒だったし。

 そもそもオレはオレで、ミアに対して、誤解を解くのに必死だったんだ。しかも最終的に、誤解が解けたのかはかなり微妙な感じで飲み会は幕を閉じたし……

 いつの間にか高いびきをかいていたナーヴィンが羨ましかったよ、まったく。

 オレが昨夜の惨状を振り返っていたら、母さんが言ってきた。

「ねぇアルデ。ティスリさんの様子をちょっと見てきてくれないかしら?」

「そうだなぁ……」

 オレは天井を見上げながらいっとき考える。

 本来なら、男のオレが女性の部屋に入るのはダメだと思うが、まぁ今さらだし、ユイナスを行かせられるはずもないし、母さんを向かわせたらティスリのほうが気を使ってしまうだろう。

 だから母さんもオレに声を掛けてきたんだろうし。

 今はまだ、そっとしておいたほうがいい気もするけど……

 とはいえ、本気で体調を崩していたら、それはそれでまずい。

「…………仕方がない、分かったよ」

 ということでオレは、ティスリの部屋に向かうのだった。

第2話 果たして扉は、何事もなく開いていき──

 アルデオレは二階に上がり、ティスリの部屋をノックしたが反応はなかった。だから声を掛けてみる。

「おーいティスリ、起きてるのか? 昼食ができたんだけど、どうする?」

 しかし声を掛けてもティスリから返事はなかった。

 これは……まだ寝ているのか、二日酔いがツラくて声も上げられないのか。

 あるいはオレたちに合わせる顔がないのか……

 まぁいずれにしても、やっかいなことに変わりはないけどなぁ。

「ティスリ、もしかして体調が悪いのか? 水差しを持ってきたから、ちょっと入るぞ、いいな?」

 扉を開けた途端、爆発したり電撃が放たれたりなんてしないよな……? ここ、オレんちだし……

 自分が黒焦げになったイメージが脳裏をよぎるも、身内しかいない我が家で、そこまでする必要があるはずもないので、オレは意を決して扉を開ける。

 果たして扉は、何事もなく開いていき──

 ──窓辺に置かれたベッドには、まんまるになった掛け布団が乗っかっていた。

 掛け布団が、まるで巨大なカタツムリのようになっている。ベッドの上には、丸まった布団のほかに何もないので、ティスリは布団の中にいるようだが……

「おいティスリ、どうした? やっぱり具合でも悪いのか?」

 心配になったオレが声を掛けるも、ティスリは無反応だ。

「ティスリ、寝てるのか?」

 オレはベッドに近づき、丸まった布団をポンポンと叩いてみる。すると布団がビクッとなったから、ティスリは確かにこの中にいて、目も覚めているようだが……二日酔いが酷くて起き上がれないのかもな。

「水差しとコップ、サイドテーブルに置いておくからな」

 体調が悪いのに長話するのも悪いと思って、オレはすぐに引き返そうとしたが、そのとき。

 布団の塊から細腕ほそうでがにょきっと生えたかと思うと、オレのズボンが掴まれた。

「ん? なんだよ?」

 なぜ掴まれたのか分からないオレはティスリに問いかけるも、ティスリはとくに反応を示さない。だというのにズボンの裾をギュッと握りしめたままだ。

「どうしてほしいのか言ってくれないと、オレも対処に困るんだが?」

 と声を掛けてみてもやはり無反応だ。

 このままでは埒があかないので、オレは布団を引っぱがすことにする。

「おーいティスリ、目が覚めてるなら、とりあえず顔を見せろよ」

 そしてオレは布団を引っ張るが……

 ん?

 オレが布団を持ち上げようとした瞬間、オレのズボンを掴んでいた細腕が引っ込んだかと思うと、布団を押さえつけている。

 どうやら布団を引き剥がされないよう、両手両足で押さえているようだ。

「……なんだ? 顔を見せたくないのか?」

 イヤなら無理に起こそうとも思わないので、オレは布団から手を離すと、そのまま部屋を出て行こうとするのだが……

 そうすると、またズボンを掴まれるのだ。

「……おいティスリ、いったい何がしたいんだよ?」

「………………」

「黙ってたら分からないだろ?」

「………………」

「なんとか言えよ、おーい?」

「………………」

 いくらオレが声を掛けても、ティスリはだんまりのままだ。

 ズボンの裾をしっかと握りしめたまま。

「はぁ……なんなんだよ、まったく……」

 仕方がないので、オレは盛大にため息をついてから、ベッドサイドに置かれていた木製のスツールに腰を下ろそうとして──

 ──その瞬間。

「隙アリ!」

「あっ……!」

 オレは勢いよく布団を持ち上げる。

 こうしてようやく、オレはティスリの顔を拝むことに成功するわけだが。

「………………はいぃ?」

 オレは思わず間抜けた声を出す。

 布団の中に丸まっていたティスリは、どうせふてくされているか、怒っているかだと思っていたんだが……

 なんでか涙目になっていた……!?

第3話 ……何かに目覚めそうでヤヴァイかもな、コレ

 アルデオレは、涙目になるティスリに驚いて凝視していると、ティスリが頬をカァッと赤くして両手で顔を押さえた。

「み、見ないでください……!」

「え、あ、え? あ……はい……」

 ティスリは、パジャマ姿でベッドの上にぺたんと座り、両手で顔を隠してうつむくも、その耳まで真っ赤になっているものだから……オレは戸惑わずにはいられない。

 今のティスリはフツーに服を着ているわけで──例えば王都の旅館で酔っ払って迫られた時のほうが、よっぽどキワドイ格好をしていたわけだが──でもどうしてか、オレはイケナイことをしている気分になってきたので、取り上げた掛け布団を返す。

「あ、あの……これ……」

「…………………………」

 ティスリは掛け布団を無言で受け取り、少しの間もぞもぞしてたかと思ったら、元のカタツムリ形態に戻っていた。

 そうしてまた、だんまりである。

「おーい、ティスリ?」

 しかしティスリの返事はない。

「いったいどうしたってんだよ? オレは退散していいのか?」

 すると布団の塊がふるふると震える。どうやら……首を横に振るジェスチャーを布団全体で示しているらしい。

「じゃあ、なんなの? 何か話でもあるのか?」

「………………」

「おーいティスリ。黙ってたら分からんだろ」

「………………」

「せめて、どうして泣きじゃくっていたのかを──」

「泣いてなんていませんよ……!」

 くぐもった声が布団の中から聞こえてくる。勘に障ることについては、言い返す気力があるらしい。

 ようやく口を開いたので、ひとまずオレはそこから切り込んでみた。

「めっちゃ涙目になってたじゃん」

「二日酔いが酷くて、目が充血してただけです!」

「そんなの魔法で治せばいいだろ?」

「二日酔いはなぜか魔法で治せないのですよ!」

「そうなの?」

「最低でもきっちり半日は苦しむのです! しかも今日はまだ気持ち悪いのです!!」

「まぁお前、昨日はムチャクチャ呑んでたからなぁ……」

「………………!」

 オレが昨日の話に触れると、ティスリはまた口を閉じる。

 うーん……

 どうやらまだ体調は完全回復には至っていないようだが、それでもおしゃべりくらいはできるらしい。

 にもかかわらず、未だこうして引きこもっているということは……やっぱ、昨日の所業が原因で、オレやユイナスに合わせる顔がないのだろう。

 いやオレはもう今さらな感じがあるから、引け目はユイナスに対して、ということだろうか。

 なのでオレはその辺を刺激してみることにした。このまま引きこもらせるわけにもいかないし。

「昨日のお前、ぶっちゃけ……酷かったぞ?」

「………………!?」

 布団の塊がびくっ!と反応したが、オレは構わず続けた。

「ナーヴィンとは馬鹿話ばっかりしていたし」

 びくっ……!

「それを見ていたミアにはドン引きされていたし」

 びくびくっ……!

「ユイナスに至っては、もはやダル絡みをしまくってたし」

 びくびくびくっ……!!

「せっかく農業でみんなの好感度を稼いだってのに、それを相殺して有り余るほどの醜態だったな。ほんっと、昨日が少人数でよかったよ」

「あ、あなたは……!!」

 オレの非難に堪えきれなくなったのか(非難というかすべて事実を述べているだけなのだが)、ティスリが顔だけ布団から出すと、やっぱり涙目のままオレを睨んできた。

あるじを慰めるとか励ますとか、そういう気遣いはできないのですか……!?」

「慰めたって、昨日の醜態は取り消せないが?」

「………………!!!?」

 う〜〜〜ん?

 普段から自信家で高飛車で、何かとオレをコテンパンにしてくるティスリの悔しがる顔を見ていると……

 ……何かに目覚めそうでヤヴァイかもな、コレ。

 オレが情け容赦ない言葉を浴びせたら、ティスリは、亀のように布団に顔を引っ込め、震える声で言ってきた。

「あなたが、そんなに冷たい人間だったとは知りませんでした!」

「だってなぁ。人の忠告を無視して、酒を呑みまくったのはお前じゃん。弁明の余地ないだろ」

「こうなることが分かっていたなら、無理やりにでも止めなさいよ!?」

「えー、イヤだよ。攻勢魔法の雨あられになるかもしれないし」

「その魔法をかいくぐってでも止められるでしょ!? あなたなら!」

「………………魔法を放つのは決定事項なのか?」

 ミアんちが倒壊しなくてよかったとオレは心底思う。

 まぁ冗談はさておき──いや冗談なのか? という疑問が一瞬よぎったがそれは封殺することにして、落ち込みまくっていたティスリも、普段の調子が戻ってきたようなので、オレは本題を切り出した。

「慰めろというなら慰めるけどさ。酒に慣れていないころは、誰だって一度や二度は醜態を晒すもんだ。だから気にすんな」

 オレが、よくある慰めを口にしてしばし、布団の中でモゾモゾしていたティスリがのっそりと起き上がる。

 そしてベッドのうえにちょこんと座り、布団を抱き締めて顔の半分を隠しながら聞いてきた。

「…………アルデは、どんな悪酔いをしたのですか?」

「そうだなぁ……オレの場合は……って」

 そこでオレはすぐ気づき、ティスリを半眼で睨む。

「お前、オレの悪酔いを聞き出して、どうするつもりだ?」

「どうもしませんよ?」

「絶対になじってくるだろ!?」

「だって! アルデばっかりわたしの悪酔いを知っていて不公平ではないですか!」

「お前が呑むのが悪いんだろ!」

「呑みたかったんですから仕方ないでしょ!」

「悪酔いするのが分かってるんだから少しは自制しろよ!?」

「分かってますよ! もうお酒は呑みません!」

 さすがのティスリも昨日で懲りたのか、今回ははっきりと「呑まない」と言い切った。これでオレは、酒で迷惑を被ることはなくなりそうだ。

 ………………まぁ、なぜかちょっぴり惜しいことした気分にならなくもないが。

「とにかくだ」

 惜しい気分を押し込めてオレは言った。

「やっちまったもんは仕方がないだろ。大切なのは今後だよ」

「………………それは、そうですが……」

「お前が気にしてんのはユイナスだろ? ミアやナーヴィンの反応も気になるとは思うが、なぜかお前は、ユイナスにご執心だもんな、珍しく」

 オレがそう言うと、ティスリはしおらしくなってコクリと頷く。

 なかなか沈痛そうなその雰囲気に、オレは素朴な疑問を抱いた。

「そもそもどうして、ユイナスをあんなに気にしてるんだ? お前、王女だってのに、平民をすごく気遣うヤツなのは知っているが、それにしたってユイナスは特別扱いしてるし」

「そ、それは……」

 ティスリはオレから視線を逸らして、訥々とつとつと語り始める。

「わたしが平民を──正確には市民を気遣うのは、市民こそが国家のかなめだと考えているからです。市民なくして、国家は成立しないのですから」

「へぇ……?」

 学のないオレでは、なぜティスリがそう考えているのかまでは分からないが、普通の王侯貴族と比較すると、あり得ないことを口にしていることだけは分かる。ただの王侯貴族は、オレたち平民を家畜同然と思っている節があるからな。

 にも関わらず、王侯貴族の実質的なトップであるティスリがそういう考えを持っているのはいいことなのだろう。まぁ、今は王女を辞めてるけど。

 オレがそんなことを考えていたら、ティスリが話を続けていた。

「ですから、わたしが市民を大切にするのは当然なのです。だというのにこの国の王侯貴族は、その大切な市民をないがしろにしていて。だからわたしは──」

「いや、お前がオレたち平民を大切にしてくれるのはありがたいけど、とは言ったって、お前がユイナスに執心しているのはちょっと違う話じゃね?」

「うっ……そ、それは……」

 オレがそこを指摘すると、ティスリが言葉を詰まらせる。普段のティスリなら、どんなことでも明確に答えを出してくるというのに、ユイナスのことに関しては曖昧な返事しかしないのだ。

 でもまぁ……人に対する感情なんて、常に曖昧なのかもしれないな。

 だからオレは付け加える。

「お前がユイナスを好いてくれているというのなら、兄としても嬉しいんだけどさ。正直、友達にしたいならアイツはおすすめしないぞ?」

「そ、そんなことはありませんよ……ユイナスさんは魅力的です」

「そうかぁ? 友達にというなら、領都で出会ったフォッテスのほうがぜんぜんいいと思うが」

「もちろん、フォッテスさんとも仲良くなりたいですが、わたしたちの旅に付き合わせるわけにもいきませんし……」

「まぁそりゃな……そうなると、しばらく村に滞在するならミアとかどうよ? ユイナスと比べるべくもなく、アイツはまともな性格だぜ?」

「も、もちろん……ミアさんとも仲良くしたいと思ってます」

 そういうティスリだったが、どうしてか、ミアに対しては心を開いていないように見える。フォッテスとはすぐ打ち解けていたと思うが。何がどう違うのか、男のオレでは分からないかもなぁ。

 ぼっちのティスリには、まともな友達が必要だと思うんだが……

 それと友達という言葉から悪友の顔が連想されたので、オレは付け加えておく。

「ちなみにナーヴィンはやめとけよ? 悪いヤツじゃないが、友達になったら、あとあと面倒になりそうだから」

「ええそうですね。彼はやめておきます」

 ふむ……ナーヴィンをサックリ切り捨てられるあたり、人を見る目がない、というわけでもないようだが……

 ならなんで、うちの妹に執心するんだ?

 オレは首を傾げるしかないのだった。

(Kindleに続く)

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