第10巻 番外編

LIGHT NOVEL

番外編5ティスリの変装

「ねぇねぇお姉ちゃん。わたし、ふと思ったんだけどさ……」

叙勲式からこっち、一連の騒動がなんとか一段落してから……

ソマわたしに向かって、ヒナカが言ってきました。

「晩餐会のとき、ティスリってば髪の色を変えてたじゃない?」

「え……ああ、そういえばそうだね。きっと何かの魔法で変えていたんだと思うけど……あれって変装のつもりだったのかな?」

「そうだろうね。まぁ、ティスリとめったに会わない人ならあれでも誤魔化せるんだろうけど、でもわたしたちはすぐ気づけたわけじゃん?」

「そうだね。印象はだいぶ違ってはいたけど、毎日顔を合わせているわけだし」

「だよね。でもさ……」

そこでヒナカはぐっと身を乗り出してきました。

「あの変装……アルデじゃ気づけなさそうじゃない?」

「……え?」

ヒナカが何を言わんとしているのか分からなくて、わたしが首を傾げると……ヒナカはさらに言ってきます。

「だってあのアルデだよ!? 髪の色が変わったら別人だと認識しそうじゃない!?」

「い、いやまさか……」

「でも犬猫は視力があまりよくないって話だし!」

「アルデさんは人間だよ? あと視力がよくないのなら、髪の色が変わったところで気づかないんじゃ……」

「あ! なるほど! 別人だと認識するより、女の子の変化に気づけない可能性がむしろ高いと!!」

「ま、まぁ……その可能性もゼロではないけれど……でも、ティスリさんのラベンダー掛かったあの銀髪が変わっていたら、いくらアルデさんでもさすがに気づくと思うけど……」

「いやいやいや!? 案外気づかないって! アルデなら!」

なんだか、アルデさんにすっごく失礼な物言いのような気がするけど……

でも気づくか気づかないかはいったん置いておくとして、わたしはヒナカの意図がいまいち分からず質問します。

「だとしても、ヒナカはいったい何を企んでいるの……?」

「ふっふっふ……さすがは血を分けたお姉ちゃん。こういうことだけは聡いね?」

「いや……こういうことに聡くはなりたくないのに、ヒナカがいつも悪巧みするから……」

わたしのささやかな抗議をスルーして、ヒナカは拳を握り締めて立ちあがりました。

「これはあれよ! ティスリの目を覚ませよう大作戦なのよ!」

「目を覚ませる……?」

「ええそうよ! ティスリの変化にアルデが気づけなかったり、あるいは別人に間違えたりしようものなら、あの気位の高いティスリのことだから……百年の恋も一気に冷めると思うのよね!」

「は、はぁ……?」

「そうして捨て犬のごとく捨てられたアルデをわたし達が拾えば、一事が万事ぜんぶ解決というわけよ!」

「いったいなんの解決になっているの……?」

「万が一にも恋が冷めなかったとしても、ティスリには精神的ダメージを与えられるから一矢報いることも可能!」

「ヒナカ……あなたティスリさんのことが嫌いなの……?」

「いや嫌いってわけじゃないけど、アルデを独占しようとするティスリのことは好きじゃない!」

「ま、まぁ……それはそうかもしれないけれど……」

「いわんや、ひょっこりと皇女様まで出てくる始末! こうなると、ただの平民でちょっと可愛い程度のわたし達では今後ますます立場が危うくなるよ!?」

「ヒナカの自己肯定感はどういう状態なの……?」

「とにかく!」

案の定、わたしの意見は完全にスルーされて……ヒナカは鼻息を荒くして言い切りました。

「こんな一石二鳥の作戦、やらない手はないわ!!」

「いやヒナカ……単純に面白がっているだけでしょう……?」

「まぁそれもある」

あっさりと認めるヒナカを眺めながら……

わたしは深いため息をつくしかありませんでした。

 

* * *

 

アルデオレは今、帝都の大通りにあるカフェへとやってきていた。一人で。

なんでも、この帝都にソマとヒナカの友人がいて、その人をオレに紹介したいのだという。なんで紹介したいのかはいまいちよく分からなかったが、別に拒む理由もなかったのでオレは承諾した。

ということでこのカフェで待ち合わせをしており、ソマとヒナカは今その友人を迎えに行っている。

それでティスリはというと──

「わたしは……ちょっと用事がありますので同席できません」

──とのこと。

なぜか非常にソワソワとした感じで落ち着きがなくそう言っていたのが不思議ではあったのだが、これに関しても特に同席を強要する理由もなかったので、今日は別行動をしている。

にしてもティスリのヤツ、この帝都になんの用事なんだろうな? プライベートで帝都に来たのは初めてだと言っていたはずだが、だとしたら用事は公用なのか? つまりは王女としての……

いやでもティスリは身分を隠しているし、そういうわけでもないと思うのだが。

なんにしても不可解なことが多い今日だが、まぁいいや。オレに言ってこないということは、本当にただの野暮用なのかもしれないしな。気になる店を見つけて買い物をしたいとか。

そんなことを考えながらオレはカフェの二階席で姉妹を待っていた。

店内は磨き込まれた木材と深紅の壁紙で統一され、天井からは小ぶりなシャンデリアが光を落としている。

さらには重厚な本棚がたくさん置かれているのが印象的だ。ただのカフェというより、貴族の書斎にでも招かれたような気分になるな。

待ち惚けアルデ

そんな様子を観察していたら、背後から声を掛けられた。

「あ、いたいた。お待たせアルデ〜」

どうやらヒナカ達が来たようだ。

だからオレは立ち上がって振り返る……と。

「え……?」

その時点で、オレは目を丸くせざるを得なかった……!

 

* * *

 

ティスリわたしがその話をヒナカさんに持ちかけられたのは昨日のことでした。

「ティスリってばさ、晩餐会で髪色かえて変装してたじゃない? あの姿をアルデにも見せようよ!」

「えっと……なぜそんなことを……?」

「なぜって……そりゃあねぇ……?」

わたしの問いかけに、どうしてかヒナカさんは目を泳がせて口ごもります。

こういうときのヒナカさんは……

絶対に、何か悪巧みをしているときです!

だからわたしは、ヒナカさんのその申し出を断ろうとしたとき、今度はソマさんが言ってきました。

「ほ、ほら! 恋人に、普段とは違う自分を見てもらうのは楽しいじゃないですか……!」

思いがけないそのひと言に、わたしは眉をひそめます。

「……楽しい、ですか?」

「そ、そうですよ! 少なくとも市井の女性陣は、デートとかでオシャレをするでしょう? あれは普段とは違う自分を恋人に見せたいからでもあるんですよ……!」

「確かに……皆さん着飾ったりしていますが……」

恋人勉強のときの様子を思い出してみても、お手本にしていた女性達は皆さん着飾っていました。かくいうわたしも、あのときは、余所行きでも華美になりすぎない洋服を選んで着ていったわけですが……

「べ、別に、アルデに見せつけるためではありませんが……!?」

思わず口走ってしまうと、ソマさんは「はぁ……?」と首を傾げます。その代わりにヒナカさんが言ってきました。

「あれあれ〜? 恋人のくせに、アルデに見せたくないってどういうことかな〜?」

はっ!? し、しまった……!

なぜか妙な恥ずかしさを感じてしまい、思わず本音を口走っていました……!

なのでわたしは、内心の動揺を押し殺して弁明します。

「べ、別に……普段とは違う自分なんて見せなくても、アルデはわたしに夢中ということです……!」

ぐっ……!

反射的に口をついて出た言い訳でしたが……

言ってて空しさを感じなくもないような……!?

そんなわたしの言い訳に嘘っぽさを感じたのか、ヒナカさんはニヤリとしていますよ……!?

「ふぅん……もしかしてティスリってば、自信ないわけ?」

「な、なんの自信ですか!?」

「だって、普段とは違う自分を見せたくないってことは、アルデに幻滅されるかもしれないってことでしょう?」

「ぜんぜん違いますよ!?」

「あるいは、アルデに気づかれないんじゃないかと思っているとか……」

「そ、それは……!?」

アルデならあり得るかもしれません!?

思わず思ってしまったことが顔に出ていたのか、ヒナカさんがすかさず指摘してきます!

「あ、今『アルデならあり得る』と思ったでしょ?」

「思ってませんが!?」

「いやいや、アルデならあり得るでしょう? 例えば、せっかく髪を変えても気づいてもらえないんじゃ悲しいし、それは嫌だよね」

「別に悲しくなんてありませんってば!?」

「ティスリ……無理しなくていいんだよ? わたしの友達も『前髪を1ミリも切ったのに彼氏に気づかれなかった』って理由で別れてたし」

「そのお友達は狭量すぎでは!?」

「いわんや髪色を変えたのに気づかれなかったら、普段からティスリのことをぜんぜん気にしてないってことだもんねぇ……」

「まだ起きてもいないことに哀れむのはやめてください!?」

わたしが声を荒げていると、ソマさんが仲裁に入ってきました。

「ま、まぁまぁティスリさん……嫌なら無理にやらなくても……」

「嫌じゃないですよ!?」

そもそもここで拒んだら、アルデに気づかれない場合、わたしが傷つくってことになるじゃないですか!?

だからわたしは立ち上がって宣言しました!

「髪色を変えてアルデと会うことなんて造作もないことです! 受けて立ってあげますよ!!」

──と、そんな感じで。

わたしは今、魔法で髪色を黒にして、オマケに服装も普段とは違う印象のものにして……

アルデが待っているというカフェへと向かっていました。

(今にして思えば……完全に乗せられました……!)

どうせヒナカさんのことだから、またわたしのことをからかっているだけなのでしょう! 現に今、わたしの隣を歩くヒナカさんはニヨニヨしていますし! さらにソマさんはハラハラした感じですし!!

まったくヒナカさんは……! どうしてこうも悪戯好きなのか……

あとこの服装……なんだかちょっと変じゃないですか!?

とくに脚が剥き出しで……ヒナカさん曰くホットパンツというそうですが、形状はパンツのはずなのに妙に脚を強調しているような気がしなくもないのですが……!?

こ、これでは髪の色云々より、ただの露出が激しい人なのでは!?

だとしたらアルデがわたしに気づかないとか、髪色がどうのとか以前に、ただ単に『変な人』と思われるのでは!?!?

「あ、あの……ちょっと待ってください、二人とも……」

だからわたしは、カフェの前まで来て姉妹を止めました!

ホットパンツでホットなティスリ

「髪色はともかく……この服装……やっぱり変じゃないですか……!?」

わたしのその問いかけに、ソマさんが首を傾げます。

「え……? ぜんぜん変じゃないですよ? むしろとてもよく似合っていますが……」

ソマさんの場合、ヒナカさんと違ってからかってきたりはしないはずですから、その言葉は信頼できます。表情からも、本気で「似合っている」と言ってくれていることが分かるのですが……

それでもわたしは食い下がりました!

「で、ですが……なんだか妙に脚がスースーするというか……!?」

「まぁ……ホットパンツってそういうものですし……あと季節的にもちょっとズレているといえばそうかもしれませんが……」

「ですよね!? ならやっぱりいちど着替え直したほうが……」

わたしが出直そうとすると、ヒナカさんがニヤリとした笑みを向けてきました。

「なぁんだ、ティスリってばやっぱり怖じ気づいたの?」

「怖じ気づいてなんていません! ただ季節外れの服装はやっぱりおかしいから──」

「大丈夫だって。確かにメインは夏場だけど、上着も羽織ってるし、今は通年でも着用している女子もいるし、ぜんぜん問題ないから」

「で、ですが……! さっきから、周囲から視線も集めていますし……!」

「それはティスリがアレだからでしょ……」

「アレとは!?」

「もう! 周囲の視線が気になるならさっさと店に入る!」

「あ、ちょっと……!?」

抵抗空しく、わたしはヒナカさんに背中を押されて入店してしまいます……!

さらに手を引っ張られて、アルデが待つという二階席へと連れて行かれました!

そうして。

二階席の窓際に……

アルデの後ろ姿が……!?

「あ、いたいた。お待たせアルデ〜」

わたしが身構える隙もなく、ヒナカさんがアルデに声を掛けてしまいます!

そのすぐあとにアルデが振り返って──

──妙な格好をしているわたしと目が合いました!?

 

* * *

 

アルデオレは呼ばれて振り返ってみれば……

そこにはヒナカとソマ、そして……

なぜか髪の毛を黒く染めたティスリの姿。

「あ、え……ティスリ?」

「……!?」

オレが声を掛けると、ティスリはどういうわけか一歩後ずさる。

「わ、わたしのことが……分かるのですか!?」

「は……?」

意味不明なその疑問に、オレは首を傾げざるを得なかった。

「いや、分かるも何も……いったい何を言っているんだ?」

「だ、だって……今のわたしは……髪の毛が……」

「え? ああ……それはもちろん気になっているんだが……いったいその髪色はどうしたんだ?」

「い、いえその……そ、それは、なんというか……」

なぜかティスリが口ごもってしまったので、なんとなく落胆しているヒナカがため息まじりに言ってきた。

「なぁんだ……ティスリだって分かるのか……」

そんなヒナカに、オレは疑問符を思いうかべながら話を向ける。

「そりゃ分かるだろ。どういうことだよ?」

「いやアルデなら、髪色が変わっていたらティスリだと分からないんじゃないかと思ってたんだよ」

「あのな……おまいはオレのことをなんだと思ってんの?」

「犬猫並みの認識力?」

「失礼にも程がある!」

そもそも犬猫だって、姿形が多少変わったところで飼い主か否かは分かるだろ!? うちのシバなんて──

──と、実家のペットを思い出したところでソマが言ってきた。

「ま、まぁまぁ……とりあえず着席しましょう。他のお客さんの迷惑になりますから……」

ということでオレ達は着席して、その直後にオレが聞いた。

「もしかして、紹介したい友達って……」

オレのその問いかけに、ヒナカは頷いてからあっけらかんと言ってくる。

「うん、そう。ティスリのこと。絶対に気づかれないと思ってたから」

「あのなぁ……そんなわけないだろ。ティスリとは毎日顔を合わせてるんだぞ?」

オレがそういうと、なぜかティスリはピクリと肩を撥ね上げる。妙に肩の露出が激しいそのブラウスだったから余計に目立った。

それにしてもティスリのヤツ……今日はなんだか借りてきた猫のように大人しいな。いったいなんだっていうんだ……?

オレがそんな様子を見ていると、ティスリと目が合って……なぜか気まずそうにさっと視線を逸らされた。

いったい……なんなの?

ということでオレは、なんとなく気まずい雰囲気をどうにかしたくて、いよいよ聞いてみた。

「それでティスリは……なんだって髪の毛を染めたんだ? まさか本当に、オレに気づかれないと思ってのことか?」

「え、あ……はい……そ、それもありますが……」

そうしてティスリは、視線を合わせずにまた口ごもる。代わりにソマが苦笑しながら言ってきた。

「ティスリさんは、普段とは違う自分をアルデさんに見てもらいたかったんですよ」

「……はぁ?」

「ちちち違いますよ!?」

オレが眉をひそめるのと同時、ティスリが大慌てで言い募った。

「こ、この姿は……そう、アレです! わたしが王族とバレないためにしているのであって、これならば、この国の王侯貴族と鉢合わせても大丈夫か否かをアルデの反応を見て確かめようとしたまでで!?」

「ああ、なるほど……とはいえなぁ……」

ティスリの説明に一応納得するオレだが……っていうか、なんでソマとヒナカは呆れ顔でティスリを見てんの?

まぁ姉妹の不可解な表情はこの際どうでもいいか。何しろこの姉妹には、オレ達の極秘任務についてはまだ説明していないからな。

つまりはこの変装も、任務の一環ということなのだろう。皇女であるオフェルテと知り合ってしまった以上、今後は確かにティスリが身バレする恐れもある。

とはいえ、だ……

「さっきも言ったが、オレは毎日ティスリと顔を合わせてるんだぞ? 参考にならないんじゃないのか?」

オレがそう言うと、ティスリはなぜかちょっと嬉しそうにうつむいた。

「で、ですよね…………毎日、顔を合わせていれば気づきますよね……」

「まぁな。だから『以前に一度しか会ったことのない王侯貴族』がどう思うかの参考にはならないと思うが」

「え、ええ……そうだと思います」

「すまんな。参考にならなくて」

「い、いえ……それはそれでいいのですが……」

「……?」

なぜかティスリがもじもじしているので、オレは首を傾げざるを得ない。

「えーと……ティスリ? まだ何か聞きたいことでもあるのか?」

「えっ!? い、いえ……そ、それは……」

それでも話そうとしないティスリに変わって、ヒナカが呆れ顔で言ってきた。

「はぁ……もう、アルデは相変わらずだねぇ……」

「相変わらずって、何がだよ?」

「もう……敵に塩を送る真似なんてしたくないのに……」

などとため息交じりに言いながらも、ヒナカは話を続ける。

「あのねアルデ。女の子がめいっぱいオシャレしているのに──」

「べべべ別にオシャレなんてしてませんが!?」

ヒナカの言葉を遮って、ティスリが真っ赤になって立ち上がる。

「ちょっとティスリは黙っててよ」

「これが黙っていられますか!? とんだ誤解もいいところなのに──」

「あー、はいはい分かったから。もう単刀直入に言うけど、今日のティスリについてアルデはどう思う?」

「ヒナカさん!?」

ティスリはか細い悲鳴を上げるわ、ヒナカは呆れ顔だわ、ソマはハラハラしているわで……いったいオレにどうしろと?

でもティスリが今以上に話を遮ってこないと言うことは……意見を言って欲しいということなのか? すでに言ったのだが。

だからオレは、頬を掻きながらも率直な意見を改めて言ってみた。

「いやだから、貴族をだませるかどうかはオレじゃ参考にならないと──」

「そうじゃなくって」

オレのその意見は、ヒナカに遮られる。

「今のティスリの姿はどうかって聞いてるんだよ」

「えっと……どう、とは?」

「例えば似合っているとか可愛いとか綺麗だとか」

「……はぁ?」

いったいそんな意見の何が参考になるのだろうか? この国の貴族でも籠絡したいってことか? あるいは違和感がなく自然かどうかを気にしているのだろうか?

まったくもって不可解ではあるのだが……今のティスリの変装が似合っているのか否かでいうのなら、それはもちろん──

「──もちろん、似合ってるに決まってるだろ?」

オレがそういうと、ティスリが弾かれたかのように顔をあげて……目を真ん丸にしてオレを見てきた。

「そ、それは、その……!?」

「そもそも、ティスリに似合わない服装なんてあるわけないじゃん。見た目(だけ)はいいんだから」

「……!?」

もちろん『だけ』の言葉は咄嗟に飲み込む。なぜなら絶対にティスリが怒るであろうことは分かるからだ!

うん、成長したなぁオレ……

などと内心で自画自賛しながらもオレは話を続ける。

「ティスリなら、例え男装したって似合うだろ」

「……!?」

「ひょっとしたら、着ぐるみを着ても似合うかもな」

「あ、いやあの……それは別に嬉しくないというか……」

「もちろん、その黒髪もいいと思うぞ。なんというか、印象がだいぶ変わって見えるし」

「……!!」

「ただなぁ……」

そうしてオレは、剥き出しの肩と脚に一瞬だけ、まったくもってバレないように視線を向けてから言い放つ。

「ちょっと、露出が多いんじゃないかと……」

「!?!?」

「王侯貴族って、スケベな連中が多そうだし、あまりに露出が多いとむしろ目立って変装にならなくないか……? そもそも服装も王侯貴族っぽくないっていうか。それとも魔族圏では、そういう服装がお貴族様の普段着なの?」

「………………!!」

オレがそんな意見を言った直後、ティスリが無言のまま歩き出す。

「え? お、おいティスリ……どこに行く気──」

「着替えてきます……!」

「い、いや待てって。別にわざわざ着替えなくても……」

「でもアルデは、わたしのことを破廉恥な露出狂だと言いたいのでしょう!?」

「いやそこまでは言っていないが!? オレはただ、貴族の目を誤魔化すための変装なのに、その目を引くのはまずいんじゃないかと……」

「衆目を集めるほどに恥ずかしい格好ということですよね!?」

「いや違うって!? あくまでも皇城内でその姿になったときの話を──」

なぜか逃げだそうとするティスリをなだめすかす羽目になる。

その脇で、ヒナカとソマが盛大にため息をついていたが……いったいなぜなのかは、結局分からずじまいなのだった……

(番外編終わり。第11巻に続く!)

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