
LIGHT NOVEL
「うむむ……最新の流行じゃというから着てみたが……」
その日、
なぜならば……
スカートがちょっと短すぎると思ったからじゃ!

だから妾は侍女長に確認する。
「なぁ……庭球というものは、それなりに激しく動く球技なのに、なぜこの正装は、こうも太ももが剥き出しなのじゃ……?」
「庭球は、前後左右に激しく動く球技ですからね。ロングスカートでは脚に纏わり付いてしまい、その動作に支障が出てしまうためです」
「だが……タイツなどでもよかったのでは?」
「その場合は、切り返しや大股の動きで支障が出るそうです。わずかな差を争うプロ競技では、それらが命取りになりますから」
「そうか……」
「とはいえ今回は余暇を楽しまれるだけですし、そこまで正装に準拠しなくてもよろしいかとは思います。ご希望でしたらタイツやスパッツをご用意いたしますが」
「そうじゃな……」
妾は再び姿見に視線を移し、ミニスカートの下にタイツやスパッツを履いてみた姿を想像する、が……
(ううむ……それだといまいちファッション性に欠けるというか……)
普通のもっさりしたタイツではあまりにオシャレじゃない。とはいえ、それなりにオシャレなスパッツ系であれば、太もも剥き出しと大して変わらぬ。むしろ運動して汗をかく分、それらを履いていると機能的にやっかいと言えるじゃろう。
「なるほどな……太もも剥き出しにはそれなりの理由があるのじゃな……」
「はい、その通りです。それと庭球は、ファッション性も重視されますので、なおさらでしょう」
「まぁ……そうじゃな……」
そもそもなぜ、妾が今日の遊戯に庭球を選んだのかと言えば……まさに見た目が華やかだからなのじゃが……!
そもそも、妾は練習のときだってこの正装をしていた。そのときは、コーチも相手の選手も全員が女子だったから、まったくもって気にならなかったのじゃが……
なんと言っても、今日は──
(──アルデがいるわけじゃし!?)
今日のアルデは他国要人との会談とかで、今は一緒ではないが、その会談が終わったら妾達と合流することになっておる。
そうしたら……
どうしたって……
アルデの目が気になってしまうじゃろう……!?
いったいアルデはどんな反応をするのか……まったくの無関心なのか、露出が多すぎると怒るのか、はたまた……
(妾のことを褒めてくれるとか!?)
いやでも……あの朴念仁なアルデのことだから、それはない気がするぞ……
だというのに褒められたら、その意外性に妾は天にも昇る気持ちになってしまうじゃろうが……!
でも逆にはしたないと怒られたら……
妾は再起不能になってしまうかもしれぬ!
どうにかして、アルデの反応を先に予見できぬものか………………はっ! そうじゃ!!
「今、ローデシア姉妹はどうしておる!?」
侍女長にそう聞くと、今ちょうど皇城に来たところで、別室で、妾と同様に着替えているはずとのこと。
「ならばすぐに呼んでくれ! 聞きたいことがある!」
ということで姉妹を呼び出すことしばし……やがて姉妹は、妾のドレッシングルームへとやってきた。
「やっほー、オフェルテ様。ご機嫌麗しゅう?」
「こここ、この度はお招きいただき光栄至極でございます!?」
ここ数日であっという間に砕けた感じになったヒナカと、相変わらず緊張しているソマは、すでに妾と同じ庭球の正装をしていた。
だから妾は二人の姿をしげしげと眺める。
「ふむ……こうして肉眼で見ると、思ったより健全じゃな」
やはり鏡越しでは実感がない、というか第三者が着ているからこそ、客観的に見られるのかもしれぬが、妾は念のために聞いてみた。
「二人ともどうじゃ? その庭球の正装は」
するとまずソマが答えてくる。
「こここ、このような高価な衣服を貸していただいて、万が一にでも汚してしまったらどうなるのでしょうか!?」
「いや、これはいわゆる運動着じゃし、別に汚しても構わぬぞ」
「ででで、ですが殿下から拝借したものを汚してしまうわけには!? もしかして汚したら打ち首ですか!? だったらせめて鞭打ちの刑にして、それをアルデさんの前でやってもらえませんか!?」
「………………お主はいったい、何を言っておるのじゃ……?」

むしろ妾がそんなことをする魔族だと思われているのなら、それこそ不敬罪なのじゃが……妾が呆気にとられているとヒナカが言ってきた。
「お姉ちゃんのコレは、いつものビョーキですから気にしないでください」
「ふむ、そうか」
「別にビョーキじゃないけど!?」
にわかに興奮しているソマを捨て置いて、ヒナカが話を続けていた。
「それにしても殿下、この衣装、ぐっとですよぐっと! 今日はこれで、アルデを悩殺しちゃおっと!」
「ほう……悩殺か」
ちょうど聞きたかった話題になったので、妾はヒナカに言った。
「この正装を見せたら、アルデはどんな反応をすると思う?」
するとヒナカは即答してきた。
「それはもちろん、まず数秒ほどじぃ〜〜〜っとこっちを凝視しますよ。今回の特徴は、とくに剥き出しの太ももですから、太ももを凝視ですね!」
「太ももを凝視!」

「もちろん、全身舐め回すように見た後にです」
「舐め回すように!?」
「そうして数秒後、ハッとするんです。そして目を逸らして、頬を赤らめながら明後日の方向を見て、『オレはぜんぜん気にしていないが?』みたいな顔をします!」
「むしろ気にしまくっているじゃろ!?」
「ええ、そうなんです。でも本人は気づかれていないつもりのようで。それがなんとも可愛いんですよ! だからついつい、からかっちゃうんですよね〜」
「な、なるほどな……」
確かに言われてみれば、アルデなら、まったくもってしそうな反応じゃ。そんな反応がむしろ可愛いというのも頷ける。
しかし、ここまで克明にアルデの反応を予想できるとなると……ヒナカは……
「………………もしかして、これまでにもヒナカはそんな視線を向けられてきたのか……!?」
「もちろんです。何しろ冒険者パーティですよ? そうならないわけがありません!」
「ぼぼぼ、冒険者とはそういうものなのか!?」
「そりゃあもう! なんと言っても命を預ける相手ですからね! 必然的に男女の仲が深まるというものです!」
「くっ……そ、そういうものなのか……」
アルデと出会ってまだ日が浅い妾では、その経験の差はどうあっても埋められそうにない……!
いわんや妾が冒険者になるなど、たとえお忍びであっても許されないじゃろうし……
妾が羨ましがっていると、いつの間にか平静を取り戻していたソマがぽつりと言った。
「何しろヒナカは、丸出しのお胸まで見られてるしね?」
「ななな、なんじゃと!?」
「ちょっ……お姉ちゃん!?」
妾の驚きとヒナカの焦りが重なった!
「ヒナカお主! まさかもうアルデとそのような仲に!?」
「ちちち、違いますよ!? あのときは樹木系の魔物に襲われて! 手足を拘束されちゃったからうっかりポロリを──」
「お主もそんなアブノーマルだったとは!」
「だから違いますって!? 魔物に襲われたって言いましたよね!?」
「お主のことだから、それも作戦のうちなのじゃろう?」
「そこまでの作戦は立ててないが!?」
う、う〜〜〜む……
まさかこの姉妹が、そこまで進んでおったとは……!
「とにもかくにもクエスト中だというのに……そのような行為に至るなど思いもよらなんだ!」
「だから違うってば!? クエスト中にそんなことするパーティはいませんからね!?」
「殿下、ちなみにわたしは、助けられたかと思ったら空高く放り投げられました!」
「なんと! もしやアルデはSなのか!?」
「はい、そうなんです! だからわたしは、どうしても期待しちゃうんです……!」
「ち、違うと思うけどなぁ………………」
そ、そうか……アルデの本性がまさかそれじゃったとは……
ここ数日、此奴らと時間を共にしているうちに、「どうやらアルデは、この姉妹にはそこまで関心がないようじゃな、しめしめ……」と思っておったのじゃが……
あれはS故の所業じゃったのか!
だとしたらソマが圧倒的に有利じゃぞ!? ヒナカはMには見えぬが……しかし
「ならば……こうしてはおれぬ……!」
この二人がアルデに気に入られているとするならば、なんとしても妾も気に入ってもらわねばならぬ! しかしMではない妾ができることと言えば……
色仕掛けじゃ!
アルデがSであったとしても、いやむしろだからこそ、その欲望を
そもそも妾の太ももは、どこに出しても恥ずかしくないのじゃ! 抜群の肉付きじゃし、それこそSなアルデからしたら、鞭で打ちたくなるくらいじゃろう!
い、いや……ソマのように鞭打ちは勘弁なのじゃが……
でもお触りくらいなら受けて立つ覚悟じゃぞ!?
「ならばやはり……この正装で挑むまで!」
そうして妾は、拳を握り締めて立ち上がった!
「よ、よし……いくぞ二人とも! 今日は決戦の覚悟で臨むのじゃ!」
するとヒナカが、いささか戸惑い気味に言ってくる。
「行くのはいいですけど……」
そしてソマは、首を傾げて聞いてきた。
「殿下はいったい、誰と戦うつもりなんですか……?」
そんな二人に、妾はいよいよ断言する!
「それはもちろん、アルデに決まっておろう!」
「「は、はぁ……?」」
そんな呆ける二人を伴って、妾は覚悟を決めて出陣するのじゃった! 庭球場に!!
(番外編4へつづく!)
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