第11巻 番外編

LIGHT NOVEL

番外編3オフェルテとミニスカ

「うむむ……最新の流行じゃというから着てみたが……」

その日、オフェルテわらわはドレッシングルームで、姿見に映る自分を見て唸っていた。

なぜならば……

スカートがちょっと短すぎると思ったからじゃ!

短いテニススカートを気にするオフェルテ

だから妾は侍女長に確認する。

「なぁ……庭球というものは、それなりに激しく動く球技なのに、なぜこの正装は、こうも太ももが剥き出しなのじゃ……?」

「庭球は、前後左右に激しく動く球技ですからね。ロングスカートでは脚に纏わり付いてしまい、その動作に支障が出てしまうためです」

「だが……タイツなどでもよかったのでは?」

「その場合は、切り返しや大股の動きで支障が出るそうです。わずかな差を争うプロ競技では、それらが命取りになりますから」

「そうか……」

「とはいえ今回は余暇を楽しまれるだけですし、そこまで正装に準拠しなくてもよろしいかとは思います。ご希望でしたらタイツやスパッツをご用意いたしますが」

「そうじゃな……」

妾は再び姿見に視線を移し、ミニスカートの下にタイツやスパッツを履いてみた姿を想像する、が……

(ううむ……それだといまいちファッション性に欠けるというか……)

普通のもっさりしたタイツではあまりにオシャレじゃない。とはいえ、それなりにオシャレなスパッツ系であれば、太もも剥き出しと大して変わらぬ。むしろ運動して汗をかく分、それらを履いていると機能的にやっかいと言えるじゃろう。

「なるほどな……太もも剥き出しにはそれなりの理由があるのじゃな……」

「はい、その通りです。それと庭球は、ファッション性も重視されますので、なおさらでしょう」

「まぁ……そうじゃな……」

そもそもなぜ、妾が今日の遊戯に庭球を選んだのかと言えば……まさに見た目が華やかだからなのじゃが……!

そもそも、妾は練習のときだってこの正装をしていた。そのときは、コーチも相手の選手も全員が女子だったから、まったくもって気にならなかったのじゃが……

なんと言っても、今日は──

(──アルデがいるわけじゃし!?)

今日のアルデは他国要人との会談とかで、今は一緒ではないが、その会談が終わったら妾達と合流することになっておる。

そうしたら……

どうしたって……

アルデの目が気になってしまうじゃろう……!?

いったいアルデはどんな反応をするのか……まったくの無関心なのか、露出が多すぎると怒るのか、はたまた……

(妾のことを褒めてくれるとか!?)

いやでも……あの朴念仁なアルデのことだから、それはない気がするぞ……

だというのに褒められたら、その意外性に妾は天にも昇る気持ちになってしまうじゃろうが……!

でも逆にはしたないと怒られたら……

妾は再起不能になってしまうかもしれぬ!

どうにかして、アルデの反応を先に予見できぬものか………………はっ! そうじゃ!!

「今、ローデシア姉妹はどうしておる!?」

侍女長にそう聞くと、今ちょうど皇城に来たところで、別室で、妾と同様に着替えているはずとのこと。

「ならばすぐに呼んでくれ! 聞きたいことがある!」

ということで姉妹を呼び出すことしばし……やがて姉妹は、妾のドレッシングルームへとやってきた。

「やっほー、オフェルテ様。ご機嫌麗しゅう?」

「こここ、この度はお招きいただき光栄至極でございます!?」

ここ数日であっという間に砕けた感じになったヒナカと、相変わらず緊張しているソマは、すでに妾と同じ庭球の正装をしていた。

だから妾は二人の姿をしげしげと眺める。

「ふむ……こうして肉眼で見ると、思ったより健全じゃな」

やはり鏡越しでは実感がない、というか第三者が着ているからこそ、客観的に見られるのかもしれぬが、妾は念のために聞いてみた。

「二人ともどうじゃ? その庭球の正装は」

するとまずソマが答えてくる。

「こここ、このような高価な衣服を貸していただいて、万が一にでも汚してしまったらどうなるのでしょうか!?」

「いや、これはいわゆる運動着じゃし、別に汚しても構わぬぞ」

「ででで、ですが殿下から拝借したものを汚してしまうわけには!? もしかして汚したら打ち首ですか!? だったらせめて鞭打ちの刑にして、それをアルデさんの前でやってもらえませんか!?」

「………………お主はいったい、何を言っておるのじゃ……?」

拷問室での鞭打ちを想像して慌てるソマ

むしろ妾がそんなことをする魔族だと思われているのなら、それこそ不敬罪なのじゃが……妾が呆気にとられているとヒナカが言ってきた。

「お姉ちゃんのコレは、いつものビョーキですから気にしないでください」

「ふむ、そうか」

「別にビョーキじゃないけど!?」

にわかに興奮しているソマを捨て置いて、ヒナカが話を続けていた。

「それにしても殿下、この衣装、ぐっとですよぐっと! 今日はこれで、アルデを悩殺しちゃおっと!」

「ほう……悩殺か」

ちょうど聞きたかった話題になったので、妾はヒナカに言った。

「この正装を見せたら、アルデはどんな反応をすると思う?」

するとヒナカは即答してきた。

「それはもちろん、まず数秒ほどじぃ〜〜〜っとこっちを凝視しますよ。今回の特徴は、とくに剥き出しの太ももですから、太ももを凝視ですね!」

「太ももを凝視!」

アルデの視線を想像するオフェルテとソマ

「もちろん、全身舐め回すように見た後にです」

「舐め回すように!?」

「そうして数秒後、ハッとするんです。そして目を逸らして、頬を赤らめながら明後日の方向を見て、『オレはぜんぜん気にしていないが?』みたいな顔をします!」

「むしろ気にしまくっているじゃろ!?」

「ええ、そうなんです。でも本人は気づかれていないつもりのようで。それがなんとも可愛いんですよ! だからついつい、からかっちゃうんですよね〜」

「な、なるほどな……」

確かに言われてみれば、アルデなら、まったくもってしそうな反応じゃ。そんな反応がむしろ可愛いというのも頷ける。

しかし、ここまで克明にアルデの反応を予想できるとなると……ヒナカは……

「………………もしかして、これまでにもヒナカはそんな視線を向けられてきたのか……!?」

「もちろんです。何しろ冒険者パーティですよ? そうならないわけがありません!」

「ぼぼぼ、冒険者とはそういうものなのか!?」

「そりゃあもう! なんと言っても命を預ける相手ですからね! 必然的に男女の仲が深まるというものです!」

「くっ……そ、そういうものなのか……」

アルデと出会ってまだ日が浅い妾では、その経験の差はどうあっても埋められそうにない……!

いわんや妾が冒険者になるなど、たとえお忍びであっても許されないじゃろうし……

妾が羨ましがっていると、いつの間にか平静を取り戻していたソマがぽつりと言った。

「何しろヒナカは、丸出しのお胸まで見られてるしね?」

「ななな、なんじゃと!?」

「ちょっ……お姉ちゃん!?」

妾の驚きとヒナカの焦りが重なった!

「ヒナカお主! まさかもうアルデとそのような仲に!?」

「ちちち、違いますよ!? あのときは樹木系の魔物に襲われて! 手足を拘束されちゃったからうっかりポロリを──」

「お主もそんなアブノーマルだったとは!」

「だから違いますって!? 魔物に襲われたって言いましたよね!?」

「お主のことだから、それも作戦のうちなのじゃろう?」

「そこまでの作戦は立ててないが!?」

う、う〜〜〜む……

まさかこの姉妹が、そこまで進んでおったとは……!

「とにもかくにもクエスト中だというのに……そのような行為に至るなど思いもよらなんだ!」

「だから違うってば!? クエスト中にそんなことするパーティはいませんからね!?」

「殿下、ちなみにわたしは、助けられたかと思ったら空高く放り投げられました!」

「なんと! もしやアルデはSなのか!?」

「はい、そうなんです! だからわたしは、どうしても期待しちゃうんです……!」

「ち、違うと思うけどなぁ………………」

そ、そうか……アルデの本性がまさかそれじゃったとは……

ここ数日、此奴らと時間を共にしているうちに、「どうやらアルデは、この姉妹にはそこまで関心がないようじゃな、しめしめ……」と思っておったのじゃが……

あれはS故の所業じゃったのか!

だとしたらソマが圧倒的に有利じゃぞ!? ヒナカはMには見えぬが……しかし彼奴あやつは、普段はアルデをからかっているくせに、いよいよになったら腰が引けそうな感じじゃしな。そこがアルデのお眼鏡に適ったのかもしれぬ!

「ならば……こうしてはおれぬ……!」

この二人がアルデに気に入られているとするならば、なんとしても妾も気に入ってもらわねばならぬ! しかしMではない妾ができることと言えば……

色仕掛けじゃ!

アルデがSであったとしても、いやむしろだからこそ、その欲望をたぎらせているはず! そこにこの妾の太ももがあれば……!

そもそも妾の太ももは、どこに出しても恥ずかしくないのじゃ! 抜群の肉付きじゃし、それこそSなアルデからしたら、鞭で打ちたくなるくらいじゃろう!

い、いや……ソマのように鞭打ちは勘弁なのじゃが……

でもお触りくらいなら受けて立つ覚悟じゃぞ!?

「ならばやはり……この正装で挑むまで!」

そうして妾は、拳を握り締めて立ち上がった!

「よ、よし……いくぞ二人とも! 今日は決戦の覚悟で臨むのじゃ!」

するとヒナカが、いささか戸惑い気味に言ってくる。

「行くのはいいですけど……」

そしてソマは、首を傾げて聞いてきた。

「殿下はいったい、誰と戦うつもりなんですか……?」

そんな二人に、妾はいよいよ断言する!

「それはもちろん、アルデに決まっておろう!」

「「は、はぁ……?」」

そんな呆ける二人を伴って、妾は覚悟を決めて出陣するのじゃった! 庭球場に!!

(番外編4へつづく!)

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